微表情

フラッシュのように一瞬で表れては消え去る微妙な表情、微表情。このブログでは、微表情、表情、顔を始めとした非言語コミュニケーションの研究や実例から「空気を読む」を科学します、「空気」に色をつけていきます。

恥・羞恥・憐れみ・軽蔑は、まだ準レギュラー?

 

百聞は一見にしかず。

本日はいきなり写真から。

 

以下の表情写真、それぞれどんな表情をしていると思いますか?

 

図1

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※本画像の権利は、株式会社空気を読むを科学する研究所に帰属します。無断転載を禁じます。

 

なかなか難しいと思いませんか?

何となくネガティブ?何かニヤけている?バカにしている?

何となく感じるものはあるケド、明確に表現するのは難しい…そんな表情たちですね。

 

人々が他者の表情をどのくらい正確に判断できるかを調査する研究では、選択式と自由回答式という方法が使われています。

 

選択式というのは、様々な表情写真と様々な表情の名前が書かれたラベルが用意され、写真とラベルを合致させるという方式です。例えば、上の表情写真を題材にして説明すると、

 

問題:図1の表情写真はどんな表情を示していますか。次の中から選択して下さい。

A.羞恥   B.憐れみ   C.恥   D.軽蔑          

 

というものです。

 

自由回答式というのは、実験参加者の前に様々な表情写真を提示して、どんな表情をしているか自由に回答してもらう方式です。

 

Widenら(2011)の研究によると、実験参加者に基本6情動と言われている「幸福」「嫌悪」「怒り」「悲しみ」「恐怖」「驚き」表情を判断してもらう場合、選択式の正解率も自由回答方式の正解率も高く、かつ両者の正解率の差はそんなにないのに対し、「恥」「羞恥」「憐れみ」「軽蔑」は選択式の正解率と自由回答方式の正解率も概ね低く、かつ両者の正解率の乖離が著しいことがわかっています。

 

これはなぜでしょうか?

 

確率的な話をすると、選択式の場合、一度表情ラベルを使用すれば当然残りの選択で使用できるラベルの数が減っていくので、正解率は高まります。

 

しかし、それだけでは説明できないことがあります。選択式にしたとしても、基本6情動の正解率と比べ「恥」「羞恥」「憐れみ」「軽蔑」の正解率は著しく低いのです。

 

一説に、「恥」「羞恥」「憐れみ」「軽蔑」は進化の過程でも新しい情動のため、サバイバルのための基本6情動と比べて、重要性が低いためであるとの見解があります。

 

「恥」「羞恥」「憐れみ」「軽蔑」の感情は、咄嗟に出てくる感情というよりも他者が存在して初めて感じる感情であり、集団生活を円滑にし、集団の秩序を保つための機能を持っているとされています。

 

だから「恥」「羞恥」「憐れみ」「軽蔑」まだまだ基本情動にはレギュラー入りできない、準レギュラーなのですね。

 

ちなみに、ここ数十年の研究で、異論はあるものの、「軽蔑」は大方、基本情動にレギュラー入りしています。

 

ん?図1の正解知りたいって?

弊社の「表情分析マスターコース」をご受講下さいませ。

そこに登場します。

 

 

清水建二

参考文献

Widen, S. C., Christy, A. M., Hewett, K., & Russell, J. A. (2011). Do proposed facial expressions of contempt, shame, embarrassment, and sympathy communicate the predicted emotion? Cognition and Emotion, 25, 898-906.