これまでのウソ検知の科学は、個人がつくウソを対象に行われ、個人がウソをついたときに生じる反応に焦点がおかれて来ました。しかしウソは一人だけでつかれるものとは限りません。組織犯罪、テロリズム、集団窃盗、集団詐欺、違法入国、偽装結婚ナドなどは、その犯罪行為もしくは犯罪計画が露呈するのを防ぐために集団でウソがつかれます。
そこで近年、集団によってつかれるウソを検知する方法が研究されはじめています。結論から先に言いますと、質問法を工夫することで、複数人によってつかれるウソは、一人によってつかれるウソよりも容易に検知することができます。
Vernhamら(2014)の研究よりご紹介します。
今回の研究目的は、カップルが本物か偽物かを検知することができるか、というものです。
本物のカップルと偽物のカップルに対して、質問者がお互いの関係について質問します。本物のカップルも偽物のカップルも質問を受ける前に30分間の準備時間が与えられます。質問される問もあらかじめ与えられます。本物のカップルは、質問者の質問に正直に答え、偽物のカップルは、質問者の質問にウソをでっちあげて答え、本物のカップルを装うように指示されます。
質問者の検知ストラテジーは、カップルに対座し、先に片方に質問をし、その話が20秒を経過したら、強制的に話をストップさせ、もう片方にその続きを話してもらいます。また20秒経ったら、もう片方へと話し手をシフトします。この質問法を質問毎に繰り返し行います。
さて、この質問法の効果はいかに?
本物のカップルを正しく検知できた確率は、73.3%で偽物のカップルを正しく検知できた確率80%でした(※)。従来のウソ検知率が50%を少し上回る程度だということを考えると、この質問法を用いた正解率はかなり高く、効果的な方法であるということができます。
それでは、具体的に本物のカップルと偽装カップルの行動上の違いは何なのでしょうか?
次回に続くです。
※正確に言うと、この正解率は質問者によるものではなく、質問者とカップルの質疑応答の様子を観察していた観察者による数値結果です。
清水建二
参考文献
Vernham, Zarah, Vrij, Aldert, Mann, Samantha, Leal, Sharon and Hillman, Jackie (2014) Collective interviewing:eliciting cues to deceit using a turn-taking approach. Psychology, Public Policy, and Law, 20 (3). pp. 309-324.