微表情

フラッシュのように一瞬で表れては消え去る微妙な表情、微表情。このブログでは、微表情、表情、顔を始めとした非言語コミュニケーションの研究や実例から「空気を読む」を科学します、「空気」に色をつけていきます。

人は見た目か?ー魅力的な異性に対する視線の向け方

 

私たちは、美しいものに興味を惹かれます。視線が向かうのです。長い間見てしまうのです。

 

幼児は、外見的な魅力を持つ人に長い間、視線を向けます。

 

成人男女は、外見的な魅力を持つ異性に、視線を向けます。

 

しかし、男女の視線の向け方には違いがあるようです(Straatenら, 2010)。

 

はじめて会った様々な男女に5分ほど会話をしてもらい、会話の後、相手をデートに誘いたいかを問います。そのときの様子が分析されました。分析の結果、

 

一つに、男女ともに外見が魅力的な異性をデートに誘いたいと思う傾向があることがわかりました。

 

二つに、男性は、外見が魅力的ではない女性と比べ外見が魅力的な女性に対して、長い間、視線を向ける傾向にありました。しかし、女性の場合、男性の外見的な魅力と視線を向ける長さとには違いがありませんでした。魅力的ではない男性にも、外見が魅力的な男性にも同じだけ、視線を向ける、ということです。

 

(だから男性は女性の視線を好意のサインだと間違えてしまうのですかね?)

 

この研究によって、魅力的な外見はデートに誘いたいと思わせる要因として男女とも重要な要素だということがわかりましたが、興味深いのは、デートに誘うか否かを決める際、男性に比べ、女性は相手のことをよく吟味して、外見の魅力だけでなく外見以外の要素も考慮に入れているだろうということです。 

 

なぜか?

 

それは私たちの祖先の繁殖戦略に関係していると考えられています。男性は外見から女性の健康度や子どもを産む能力を見積り、子孫を増やす戦略を成功させてきました。一方、女性も外見から男性の健康度や繁殖力の高さ、身体的な強さなどを見積もるのですが、それに加え、より重要な要素、例えば、家族を養ってくれるか、という観点に注視し続け、繁殖戦略を成功させてきました。だから女性は男性を受け入れるか否かに関して、外見的な魅力度が占める重要度が相対的に低くなり、優しさや誠実さ、経済力などの他の要素が重要な考慮の要素となってきたと考えられるのです。

 

人は見た目じゃない、ただし、男性にとっては??

 

進化生物学はそう教えてくれます。

 

しかし、女性も稼ぐ今日、主夫が増える今日、この解釈がひっくり返っている現象も十分考えられますよね。

 

だから、結論を言い換えます。

 

人は見た目じゃない、

 

男性にとっても、女性にとっても。

 

 

清水建二

参考文献

van Straaten I1, Holland RW, Finkenauer C, Hollenstein T, Engels RC. Gazing behavior during mixed-sex interactions: sex and attractiveness effects. Arch Sex Behav. 2010 Oct;39(5):1055-62. doi: 10.1007/s10508-009-9482-x. Epub 2009 Mar 5.