本ブログで以前、アルコール及びニコチンと表情認知との関係について紹介しました。
簡単に振り返りますと、アルコールを飲んでいたり、タバコ(ニコチン)を吸っているとき、本来非対称な表情が対称に補正され、美女・イケメンに見える、というお話でした。
今回は、この話をより広げて、Millerら(2015)のレビュー論文から、薬物の影響と表情認知との関係について紹介したいと思います。
アルコールと表情認知
適度に飲酒をしている人は、他人の表情を魅力的に評価する傾向にあり、ネガティブな表情に気付きにくくなる傾向にあることがわかっています。
ニコチンと表情認知
タバコを吸っている人は、他人の表情を魅力的に評価する傾向にあり、この傾向は、タバコとアルコールが同時に摂取されているとき、より顕著となることがわかっています。
カンナビノイド(大麻に含まれる化学物質の総称)と表情認知
カンナビノイド(THC及びCBD)の影響下にある人は、他人の怒りや恐怖といった人に脅威を与える表情の読みとりが困難になることが知られています。つまり、他者に対して恐怖を感じなくなり、社会不安を感じにくくなり可能性があるとされています。
オピオイド(アヘン類縁物質)と表情認知
オピオイドの影響下にある人は、他人のネガティブ表情の読みとりが困難になる傾向があることがわかっています。
各種刺激薬と表情認知
MDMAの影響下にある人は、他人のネガティブ表情に鈍感になり、ポジティブ表情に敏感に反応することがわかっています。
以上のように、薬物は他人のネガティブ表情に鈍感になることで、対人不安を減少させるようです。対人不安があるから薬物(アルコール含む)依存の走るのか、薬物の影響下で感じた多幸感が忘れられずに依存に走るのか、因果関係は両方向に向いているような気がします。
厳しい人生を生きていくには、ときに人は「色メガネ」を必要とするようです。
でも、生きていくのが辛いからといって、違法薬物に手を出すのはダメですよ。
飲みに行きましょう…ほどほどに。
清水建二
参考文献
Miller MA, Bershad AK, de Wit H. Drug effects on responses to emotional facial expressions: recent findings. Behav Pharmacol. 2015 Sep;26(6):571-9. doi: 10.1097/FBP.0000000000000164.