微表情

フラッシュのように一瞬で表れては消え去る微妙な表情、微表情。このブログでは、微表情、表情、顔を始めとした非言語コミュニケーションの研究や実例から「空気を読む」を科学します、「空気」に色をつけていきます。

Lie to meから学べる表情学9

 

Lie to meエピソード1の第一話「偽りを見抜く男」でこんな場面が出てきます。

 

ある人物の感情を確かめるために、ライトマン博士がその相手にさりげなく握手をします。

 

その後、握手をした理由を次のように語ります。

 

「生理的逃走反応だ。逃走に備えて血流は一気に脚へ、手は冷たくなる。」

 

「恐怖」感情の表れとしています。

 

これは本当でしょうか?

 

答えは、

 

理論的には本当

 

です。

 

ただ、握手だけでどのくらい正確にその温度変化を感じ取ることができるかどうかは不明です。

 

感情と生理的反応に関しては古くから様々な研究がなされており、感情毎に異なる生理反応が生じることが知られています。

 

Levensonら(1990)の研究から「恐怖」感情の理論的メカニズムをとらえてみましょう。

 

私たちが「恐怖」を感じると、安全な場所を求めて、その場から逃げたくなります。そうすると身体の血流は、身体の末端から脚に集中します。その結果、指の温度が低下する、という現象が起きると考えられています。

 

「怒り」の場合はこの逆です。私たちが「怒り」を感じると、身体は戦いの準備をします。武器を使ったり、敵に掴みかかったりするために、身体の血流が手に集まるのです。その結果、指の温度が上昇する、と考えられています。

 

実際に、サーミスタを用いた測定器で感情の変化と指の温度の変化との関係がわかっています。しかし、先に書いたように、握手だけで感情の変化を敏感に察知できるのかどうかについては謎です。

 

個人的な経験としては、握手を求めたとき、確かに緊張している人は手が冷たいように感じます。怒っている人に近づくのは危険なので、握手を求めたことはありません。

 

また、以前ブログのどこかでも書きましたが、タッチで感情がわかる、という実験結果もあるため、握手でも各種の感情変化を把握することが出来るのかも知れません。

 

触れるだけで感情の違いがわかる、鮮明にわかる、ぜひその域にも達したいものです。

 

 

清水建二

参考文献

Levenson, R. W., Ekman, P., & Friesen, W. V., (1990). Voluntary Facial Action Generates Emotion-Specific Autonomic Nervous System Activity. Psychophysiology, 27 (4), 363-384.