シリーズ「ウソ検知の科学」、今回のテーマは、
どのようにベースラインを構築すればよいのか、
についてです。
いくつかありますが、今回はポリグラフ検査で実施されている質問方法を参考にご紹介します(※)。どんな質問方法かというと、
①「犯人(と捜査関係者)しか知らないはずの犯罪に関わる事実」と「犯罪に関わり得るが事実と異なる事」を容疑者に質問します。
➡このとき容疑者は犯罪に関わることを聞かれているので、心理的・認知的負担を感じる状況の中にいることになります。
②「犯罪に関わる事実」と「犯罪に関わると考えられるが事実と異なる事」とを質問したときの容疑者の反応を比べます。
➡容疑者が本当に犯罪に関わっていなければ(正確には、事実を知らなければ)、前者の種類の質問と後者の種類の質問に対して、変わらない反応をすると考えられます。しかし、容疑者が犯罪に関わっていれば、両者の質問に対して、異なる反応をすると考えられます。
こうすることで緊張状況でのベースラインの差を比較することができるのです。
他にも、犯罪が行われた日のことを時間で分けて、容疑者に尋ねると言う方法も考えられています。例えば、夜に犯罪が行われたとします。容疑者に犯罪が行われた日の、朝、昼、夜の行動についてのアリバイを聞きます。犯罪の行われた日のことを聞かれているため、緊張状態に置かれます。一定して緊張しているのか、犯行時間のときの証言時のみ異なった緊張反応を示すのか、比較する方法があります。
このように質問の仕方を工夫することで正しくベースラインを構築することができるのですね。
変化を正しく観るには、調べたいこと以外の変数を一定にして比較する、という科学実験の王道を利用することが大切なのですね。
次回は、ウソ神話についてご紹介したいと思います。ウソつきは目をそらすのか?
ではでは、お楽しみに。
※いわゆるウソ発見器と呼ばれているものです。しかしポリグラフ検査器はウソを直接発見できるわけではありません。犯罪に関わる事実を知っているかどうかを生理的数値の変化から推定しているのです。したがって、ポリグラフ検査器のことを記憶検査器と呼んだ方が、適切なのではないかと私は思っております。
清水建二
参考文献
ウソ検知の科学について一級の専門家たちによって平易にまとめられている書籍です。ウソ検知の科学に興味のある方にはオススメの一冊です。