本ブログの読者の方はよくご存知のように、7つ基本感情は万国共通の表情として誰の顔にも表れることがわかっております。
それでは、顔以外のボディー・ランゲージで万国共通なものはあるのでしょうか?
結論としては、あります。
ボディー・ランゲージの多くは文化固有のものが多いので解釈するときに殊に注意が必要ですが、万国共通のボディー・ランゲージも存在しています。本日は、「プライドと恥感情」に関するボディー・ランゲージをご紹介したいと思います。
2004年のオリンピック・パラリンピックに出場した目の見える選手と盲目(先天的もしくは生まれてすぐに視力を失った者)の選手らの試合に勝利、もしくは敗退した時に見せるボディー・ランゲージが、ボディー・ランゲージの専門家たちによって比較されました。37ヶ国の国々に属する選手が対象です。
このとき、勝利したときのボディー・ランゲージをプライド感情の反応とし、敗退したときのボディー・ランゲージを恥感情の反応としました。
観察の結果、
試合に勝利したときの、目の見える選手及び盲目の選手らのボディー・ランゲージにはそれぞれ共通のものが観察されました。
試合に勝利したときのボディー・ランゲージ、すなわち、プライド感情を表すボディー・ランゲージとして、頭を後ろに傾ける・笑顔になる・腕を身体から離し広げる・腕を引き上げる・拳をつくる・胸を膨らませる・胴体を押し出す、という反応が観察されました。
試合に負けたときも、目の見える選手及び盲目の選手らの間で同様のことが観察されました。
試合に負けたときのボディー・ランゲージ、すなわち、恥感情を表すボディー・ランゲージとして、肩を前方へ落とす・胸を狭める、という反応が観察されました。
興味深いことに、恥感情を表すボディー・ランゲージとして広く信じられている、頭を下げたり、顔を隠したりする反応は観察されませんでした。
恥ずかしいときに顔を隠す動作を日本でよく見受けますが、この研究から推察するに、この動作はきっと文化固有でかつ学習によって私たちが身に着けたボディー・ランゲージなのかも知れませんね。
清水建二
参考文献
Tracy, J. L., & Matsumoto, D. (2008). The spontaneous expression of pride and shame: Evidence for biologically innate nonverbal displays. Proceedings of the National Academy of Sciences, 105(33), 11655-11660.