皆さんは、不動明王のお姿を拝するとどんな感情が湧き起こってくるでしょうか?
まず、「怖い!」ですよね。
それもそのはず、不動明王のお顔は、「忿怒顔」といい、「怒り」表情をしています。
本日は、この「忿怒顔」のお不動様を表情学の手法を用いて分析してみます。
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お不動様の表情は複雑ですので、部分に分けて分析します。
①眉と額の部分:眉毛の形が、いわゆる「カギ型眉毛」になっています。さらに額に「波状のしわ」が見られます。これは典型的な「恐怖」表情です。
②目の部分:見開いている右目は下降している眉毛とセットで考えることで「怒り」を表していることがわかります。
③下まぶたの下から口の部分:下唇は押し上げられ、唇の両端は下がっています。これは「悲しみ」を表しています。よく注意すると、唇全体に力が入っています。ここから「悲しみ」をこらえようとしていることが読み取られます。
①②③を総合すると、この不動明王様の表情からは「恐怖」「怒り」「悲しみ」の3つの表情を読み取ることが出来ます。
不動明王様は仏の心がわからない者に対し、忿怒の表情で震え上がらせ、仏教に帰依するように強制的に働きかけると言われています。しかしそこには、怒りの感情だけでなく、そうした者に対する憐れみの心、仏の心を理解できずに苦しみの世界から抜け出せない者に対する悲しみの感情も併せ持っていると言われています。
不動明王像、「一見すると怖い、でも根は優しい」という心が表情から溢れ出ている良い例だと思います。
清水建二
参考文献・web
下泉全暁『不動明王 智慧と力のほとけのすべて』春秋社