微表情

フラッシュのように一瞬で表れては消え去る微妙な表情、微表情。このブログでは、微表情、表情、顔を始めとした非言語コミュニケーションの研究や実例から「空気を読む」を科学します、「空気」に色をつけていきます。

愛想笑いと本当の笑い

  私たちは、日々、様々な表情とともに会話を楽しみます。表情で会話をしていると言っても良いかも知れません。相手がつらい体験を語っているときは、ハの字まゆ毛で聞き、楽しい体験を語っているときは、笑顔で見つめ、相手が話を強調すれば、驚き顔で返事をします。逆もまた真です。

 

 相手の話に心が動かされて表情に表れたり、表情を意図的に作ることで、相手に同情の念を示したりします。しかし、相手に同情の念を示せないほどに、話の内容にうんざりしてしまうことがあります。特に面白くない話を聞かされているときに、愛想笑いを浮かべ続けるのは苦痛です。

 

そんなとき私は、

 

(気づけ、気づけ、気づけ~もう、その話はたくさんですよ~!愛想笑いもそろそろ限界ですよ~!!)

 

と、心の中で叫んでいます(笑)。

 

…とはいう私も、どれほど周りの皆さんに同じ思いを抱かせているかわかりません(泣)。

 

そこで!今回は、愛想笑いと真実の笑いの違いを皆さんとともに見ていきましょう。

 

 表情研究の大家であるPaul Ekman及びWallace Friesen博士らが、愛想笑いと本当の笑いそれぞれの特徴を3つの観点から分析しています。 

 

 

1. 対称性

 

 本当の笑いの場合、唇の両端(口角)は左右対称に引き上げられます。しかし、愛想笑いの場合、それが左右非対称に引き上げられます(Ekman, 1980)。特に右利きの人が愛想笑いをする場合、左側の口角が右より強く引き上げられる傾向があります(Ekman, Hager, & Friesen, 1981)

 

同じ非対称の「軽蔑」表情と混同しないように注意しなくてはいけませんね。 

一般的に「軽蔑」の方が、口角の上がり方が強くなります。 

 

2. 継続時間

 

 本当の笑いの場合、笑顔が持続する時間は0.5秒から4秒の間です。つまり、そこから外れると愛想笑いであるということになります(Ekman & Friesen, 1982)

  

3. 使う筋肉

 

 本当の笑いの場合、唇の両端が引き上げられるだけでなく、目のまわりの筋肉(眼輪筋)も収縮します。目のまわりの筋肉の収縮は、いわゆる「カラスの足あと」で知られる目尻のしわとして表れます。愛想笑いの場合、唇の両端だけが引き上げられ、目のまわりの筋肉は収縮しません(Duchenne, 1862/1990)

 

 

 目の前の相手の顔に愛想笑いが浮かび続けていたら、話題を変えたり、会話をバトンタッチしてみましょう。きっと心地よい会話のキャッチボールが続けられるでしょう。

 

 

最後にオススメサイト情報です。 

http://www.bbc.co.uk/science/humanbody/mind/surveys/smiles/index.shtml

 にて、Paul Ekman監修の「愛想笑いを探知せよ」診断テストが受けられます。ご自身の愛想笑い探知能力を測りたい方は、ぜひアクセスしてみて下さい。 

  

 

 

清水建二

 

 参考文献

Duchenne, B. (1990). The mechanism of human facial expression or an electro-physiological analysis of the emotions (A. Cuthbertson, Trans.) New York: Cambridge University Press. (オリジナルは1862年に出版)

Ekman, P. (1980). Asymmetry in facial expression. Science, 209, 833-834.

Ekman, P., & Friesen, W.V. (1982). Felt, false, and miserable smiles. Journal of Nonverbal Behavior, 6(4), 238-252.

Ekman, P., Hager, J.C., & Friesen, W.V. (1981). The symmetry of emotional and deliberate facial actions. Psychophysiology, 18(2), 101-106.