微表情

フラッシュのように一瞬で表れては消え去る微妙な表情、微表情。このブログでは、微表情、表情、顔を始めとした非言語コミュニケーションの研究や実例から「空気を読む」を科学します、「空気」に色をつけていきます。

ヒロミ&菊池風磨の尋問に日向坂・富田がタジタジ!? 究極のお金隠し心理バトル!!『マネーハンター』2/19(土)【TBS】に出演します~撮影の裏側~後編

 

「マネーハンター」をご覧下さった皆さま、ありがとうございます。表情アナリストとして、取調室で元刑事さんの斜め後ろに座り、マネーを隠す側の表情を観察しておりました清水建二です。本日は、私が用いた方法をご紹介したいと思います。

 

抑制された感情が微細な表情として顔に生じます。微表情と言います。この微表情の観察を通じてマネーの隠し場所を見つけようとしました。

 

しかし、私たちの感情は、様々な理由で揺れ動かされ、それに連動する形で表情・微表情が生じます。ですので、何の気なしに会話した結果、微表情が生じたとしても、その微表情が生じた原因はわかりません。感情を抑制した理由は複数あり得るのです。例えば、何もしていない人に「ウソをついていますね」と問えば、嫌な気持ちになり、嫌悪(微)表情が生じ得ます。ウソをついている人に「ウソをついていますね」と問えば、その質問に答えたくなく、同じく嫌悪(微)表情が生じ得ます。

 

そこで重要なのが、微表情の原因を絞るための質問法となります。

 

マネーを隠す側で出演されていた日向坂46富田鈴花さんの尋問シーンを例に説明したいと思います。

 

番組のルールとして、取調べ時間は10分です。リアルな世界では、特別な面接法や質問法を駆使し、数時間~数日にわたり真相に近づいて行くのですが、今回のルールでは、たったの10分です!最初このルールを聞いたとき、「無謀!」と思いましたが、難しい条件ほどチェレンジャー精神が沸いてくる性分です。そこで限られた時間の中で出来る最善の方法を考えました。

 

私の思考は次の通りです。

 

マネーを隠す場所がABCDEFGHとエリア毎に分かれている。
自分のマネーを隠した場所を富田さんは知っている。
富田さんは、マネーを賞金として持ち帰りたいと強く思っているだろう。
ゆえに、マネーを隠し切りたい動機は高いだろう。
そうであるならば、富田さんは、マネーを隠さなかったエリアに比べ、隠したエリアに対して、異なる反応や動揺をするだろう。
その反応や動揺が微表情やその他言動として生じるだろう。

 

というものです。
これ専門的には個人内比較法と言います。

 

そこで、質問役の元刑事さんに「『隠したのはAですか?』『Bですか?』とエリア毎に聞いて下さい」とお願いしました(取調室での質問役をされていたのが元刑事さんで、私は観察役でした)。

 

富田さんは各質問に対し、

 

Aで、下唇を引き上げ、唇を尖らす
Bで、何もなし
Cで、口角を引き上げる
Dで、C同様
Eで、C同様
Fで、C同様
Gで、C同様
Hで、下唇を引き上げ、口角を引き下げる

 

となりました。口周りに力を込める表情は、感情を抑制したり、熟考するときに生じます。口角を引き上げる表情は、幸福、いわゆる、笑顔です。ウソの文脈では、騙す喜びという現象が知られています。

 

そこで、反応の異なるAか、反応が変わり始めたCを優先的に捜索するべきと考えました。結果としては、富田さんはAとHにマネーを隠していました。Cには何がありましたか?番組をご覧になった方はおわかりかと思います笑

 

解釈が難しかったのがHです。Hは最後の質問です。「Hですか?」のときの表情も、A同様、感情抑制か熟考なのですが、最後の反応なので、Hに対する反応なのか、質問されていること全体に動揺が及んでいるのか、判然としません。そこでA~Hの順番を変え、何度か質問し検討を重ねたいところでしたが、タイムアウト

 

同じような感じで他のチャレンジャーの心理も推測しようとしてました。勝敗はご覧の通りです。無論、エリアを特定することが出来ても、実際のマネーを見つけなければ探す側は勝ちとなりませんので、取調室を出て現場で必死に探します。現場での元刑事さんの観察は凄かったですね。そして、菊池さんのブリリアントな推測、ヒロミさんのリーダーシップ。全てが揃ってこの結果だと思います。

 

何はともあれ、番組をご覧頂いた皆さまに楽しんで頂けたならば、嬉しいです。次回があれば、また作戦を練って挑戦したいと思います。

 

追伸:
菊池風磨さんのちょっと良い話。
マネーを菊池さんの近くで一緒に探していたときのことです。菊池さんの手が、机の上にあったポップアップ広告に当たり、私の方へ倒れて来ました。とは言え、20cmくらいの小さな紙のポップアップです。体に当たっても無視できるレベルです。それにも関わらず、菊池さんは、「あ、すみません」と。きっと菊池さんは良い人です。こういう些細なことでも咄嗟に気を配れる人は、良い人です。経験上知っています。え?ファンはすでに知っている?失礼しましたm(__)m

 

アイドルの心理を知りたい方は、こちらの記事も是非。

bunshun.jp

 


清水建二

ヒロミ&菊池風磨の尋問に日向坂・富田がタジタジ!? 究極のお金隠し心理バトル!!『マネーハンター』2/19(土)【TBS】に出演します~撮影の裏側~前編

 

2月19日(土) 午後2時『マネーハンター』TBSに出演します。紹介VTRをご覧下さい。

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面白そうですよね。撮影に参加していて、ときに緊張し、ときに笑いがこみ上げ、ときにワクワクし、実際面白かったです。

 

私は、マネーを探す捜査官チームのメンバーとして出演しています。

 

私は、犯罪容疑者や各国首脳の表情等から心理分析をする仕事をしておりますので、ウソを推測することは業務の一つです。「それなら簡単なんじゃない?」と思われるかも知れませんが、ところがどっこい、難しいです(探すチームに与えられた条件の詳細は、放送をご覧ください)。

 

そこで私が思いついた作戦は、これです。

youtu.be

 

微表情から戦略的にウソを見抜く。

 

さぁ、マネーを隠すチームと探すチーム、勝つのはどちらでしょうか?

『マネーハンター』2/19(土)【TBS】午後2時放送です。是非、ご覧下さい。

 

つづく

 

 

清水

第7回『裏切り者は顔に出る-上司、顧客、家族のホンネは「表情」から読み解ける』制作裏話

 本日、2022年2月9日(水)に清水建二の新刊『裏切り者は顔に出る-上司、顧客、家族のホンネは「表情」から読み解ける』が中央公論新社より発売となりました。本書の内容の紹介と制作裏話を書き連ね、今回で7回目を迎えました。書籍の内容については、前回で全て紹介し終えましたので、今回は、本の価値について思うところを書きたいと思います。

 

 本は、安いと思います。本書に限らず、本は、込められている情報の質と量を考えるとき、その価値に比して、とても安価だと思います。著者の長年の経験や膨大な知識が凝縮され、本書なら946円で手に入れることが出来ます。経験や知識を血肉化する過程で、上手くいくことよりも上手くいかないことの方が多かったことでしょう。それをゴールから教えてくれるのです。「こうしたら失敗しましたよ」「こんなやり方で成功しましたよ」「これを上手く行うには、ちょっとしたコツがありまして、それは…」というように。

 

 本書で言うならば、本書は、科学知見を根拠にウソや心理の推測法を説明していますが、「使える」と思える科学知見は、例えば、学術論文20本中1本あるか否か、という割合です。

 

 明らかにしたい現象の科学的説明を求め、論文を検索します。ヒットした論文を、手に入る限り、時間の許す限り、読みます。このとき思うことですが、学術的なレポートや論文を書く方が一般書を書くより報われるな、ということです。なぜなら、学術系の文の場合、自分の論を書く前に先行研究を紹介します。基本的に穴のないように書くため、自分が調べたほとんど全ての学術論文の内容を盛り込むことが出来ます。しかし、一般書である本書の場合、読者にわかりやすく、かつ、使える内容しか掲載できません。というか、掲載しません。「数日費やして調べ尽くしたのに、本に掲載できる情報が何もなかった!」ということがよくあります。正確に書きますと、本書の内容は、セミナーや社員研修を経た知見ですので、「数日費やして調べ尽くしたのに、セミナー・研修で紹介できる情報が何もなかった!」となります。これ結構、体力を消耗しますし、心も折れるのです。しかし、有益な情報が見つかったときの喜びは、落胆が大きいほど、見つからない日が続いたときほど、大きいです。こうして厳選されたネタが書籍化されます。本は、安い。

 

 また、私のセミナーを受けられた方はお気づきになるかと思いますが、本書の全ての内容を個人様がセミナーで受けるとなると100万円ほどかかると思います。100万円の内容が、946円。安い。本は、実に、安い。これも正確に書きますと、セミナーでは豊富な画像や動画を観ながら、分析しながら学んで頂きますので、セミナーと本の値段を単純に比べることは出来ません。しかし、少なくとも100万円のセミナーのエッセンスを946円で手に入れることが出来る、とは言えるでしょう。

 

 本は凄いです。色々な経験や知識が、試行錯誤を経て知恵となったものです。本を読む度に筆者の知恵を、筆者の視点を、筆者と同じ苦労をせず手軽に手に入れることが出来ます。もちろん、筆者の知恵に深く納得したり、その知恵を有効活用できるかは、読後の読者の努力次第です。しかし、本を読まなければ、帰納的にしか得ることの出来ない知恵を、本は演繹的に教えてくれるのです。ということで、本を読みましょう。読んだ数だけ、視点が変わる。知恵が得られる。

 

 清水建二著『裏切り者は顔に出る-上司、顧客、家族のホンネは「表情」から読み解ける』中央公論新社(2022年)2月9日発売です。

www.amazon.co.jp

 

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立川の書店にて。偉大な村上陽一郎先生と同時発売だということを知り、
さらに、2冊が隣同士に並んであるのを発見し、二重に感動。

 

清水建二

第6回『裏切り者は顔に出る-上司、顧客、家族のホンネは「表情」から読み解ける』制作裏話

 

 単著としては4冊目、共著・翻訳版を合わせますと7冊目となります清水建二の新刊『裏切り者は顔に出る-上司、顧客、家族のホンネは「表情」から読み解ける』が中央公論新社より2022年2月9日に発売されます。本日は、本書の制作ストーリー第6回目。本書の最終章である第五章について紹介したいと思います。

 

 第五章は、「日常に潜む危険サイン」です。具体的には次の通りです。

 

・離婚率九〇パーセントの表情

・子どものウソは泥棒の始まり?

・消費者の言うことと表情は四割が一致しない

・ビジネスで活きるテクニック

・接待で相手の苦手なものをススメてしまう人

・美味しい表情は無表情!?

・「自分は良いことを言った!」と思っているときが一番キケン!

・部下からの突然の退職願。「大丈夫です!」は要注意

・自分を大きく見せるウソ……そこまで行ったら詐欺です

・採用面接でコミュニケーション能力を見抜く

・感情認識AIの落とし穴

・<コラム>犬とのコミュニケーション

 

 本章では、日常に潜むウソや人間関係に関わるリスクについて説明しています。これまでの章を参考にしつつ、本書の内容を読んで頂ければ、リスクに対する心構えとなります。また、いざ類似のリスクに遭遇したとき、リスクを回避する可能性を高められるでしょう。

 

 本章で最も伝えたいことでもあり、全ての章の締めとして、私が最も伝えたいメッセージは、体験と科学的見方を行ったり来たりする大切さ、です。「科学的方法」「科学的に実証済み」等と名を打っている一般書は、書店に行けば山ほどあります。「〇〇大学の△△教授によると、記憶力を高めるには▭▭するとよい」「年収の高い人は、統計的に〇〇な人なので××すべき」「科学的にウソのサインは▭▭と言うことがわかっているため、このサインがあればウソを見抜くことが出来る」等々書かれています。

 

 著者の方々、それ自分で出来ます?自分で実践しています?その方法でどのくらいの方々が目的を達成しましたか?

 

 私は、声を大にして聞きたいです。著者が実践していないこと、再現出来ないことを書くのは、無責任じゃないですか、と。「~した方がよい」「~すべき」「~出来る」というアドバイスに実践・体験が伴っていなければ、それは机上の空論と言われても仕方ないでしょう(なお、大学教授や科学者などによって書かれる学術的事実や科学知見をまとめた書籍には、「べき」という価値判断を反映した言葉は使われません。知見のレビュー本ならばー教科書、レビュー論文集、辞典や図鑑を想像して下さい-著者の価値判断や思想が反映されない方が適切であり、知見を純粋に知りたい読者にとって、そうした無色透明の記述がよく、通常、著者本人の体験は求められません。また、書籍の中に科学的な発見が書かれる場合、基礎科学の知見であったり、実用段階にはない知見もあり、机上の空論に見えてしまうだけの知見もあります。しかし、それらの知見は偉大な発見の土台となるかも知れない可能性を秘めています)。

 

 一方、体験をベースにした書籍があります。成功を収めた経営者による人生訓や経験談、ビジネス指南本は出版されない日はないほどポピュラーです。現マナー講師が、接客係時代に体験したお客さまとの心の触れ合いを描いた本などもあります。本書のテーマであるウソの見抜き方ですと、元警察官などによって書かれた書籍があり、著者が体験した事件や取り調べをベースに描かれています。そうした方々の実話は、ときにスリリング、ときにハートフルで、とても楽しく、そして有難く、読むことが出来ます。また、記述の中に筆者と類似の体験を見つけると、「わかる!」「そう!やっぱり、そうだよね」と共感することが出来ます。

 

 こうした個々の体験が特殊な体験として描かれることに、何も問題はありません(問題どころか、様々な筆者の人生を追体験する感覚を味わえたり、著者独自の考え方や生き方、物の捉え方を知ることが出来、こうした書籍に敬意を抱きます)。問題が生じ得るのは、筆者が体験した個々の体験が抽象化され、方法論として紹介されるときです。その体験は、本当に一般化できるほどの再現性を持っているのだろうか?特殊な状況下において、あるいは、いくつかの条件が揃うとき、有効な方法になるのではないか?だとしたら、その状況・条件とはなんだろう?そんなふうに思うのです。

 

 英語に例えたらよいでしょうか。英語を話すことが出来ない英語の先生って違和感を抱きませんか。英語の文法や語源に詳しいのに全然話せない。英語の理論は知っているけど、それを使うという体験がない・乏しいため、話せない。一方、英語圏で生活し、英語はペラペラなのだけど、自身が話している文法を解説することは出来ない。解説をお願いすると一応は説明してくれるものの、納得出来ない。その説明が当てはまらない事象が多い。

 

 誰かに方法論を提供する立場にある場合、両方のスキルが必要だと私は考えます。

 

 より良く生きるために。より快適に生きるために。そしてその方法を誰かに伝えるために、私が採った方法。それは、体験と科学を行き来することです。科学的に有効だとされる方法を実生活で試してみる。論文で発表されたものと同様・類似の実験をして、再現率を確かめてみる。再現率が高い方法は採用。低いものは不採用、あるいは、高められる方法を検討。科学的知見が明らかに現実世界と乖離している、体験とは全く異なる、そんなときは、体験から得られた知見を科学実験に持ち込み、実験し、科学知見に修正を迫る。こうした試みを私自身はもちろんのこと、受講生・研修生の皆さんにしてもらい、常に検証し続けています。こうした試行錯誤の末、生き延びた知見、ウソと心理を推測する方法を本書に書きました。

 

 体験と科学のハイブリッド本。清水建二著『裏切り者は顔に出る-上司、顧客、家族のホンネは「表情」から読み解ける』中央公論新社(2022年)2月9日発売です。ご予約はこちらから。

https://www.amazon.co.jp/dp/4121507541/ref=nosim?tag=chuko1hp-22&fbclid=IwAR1anHmIzIWLSVaDKdkryzNF_6T8qOxb6pzmcsePYGNAuzYue8A55ZIigp8

 

では、また次回。

 

 

清水建二

 

第5回『裏切り者は顔に出る-上司、顧客、家族のホンネは「表情」から読み解ける』制作裏話

 

 2022年2月9日、清水建二の5年ぶりの単著となります『裏切り者は顔に出る-上司、顧客、家族のホンネは「表情」から読み解ける』が中央公論新社より発売されます。本日は、本書の制作ストーリー第5回目。第四章について紹介したいと思います。

 

 第四章は、「会話から漏れる心理」です。具体的には次の通りです。

 

・声に込められる感情と心理

・感情はどのように声に表れるのか?

・言葉にならない「パラ言語」

・「私は娘を愛していた」…誘拐犯の母親がついた嘘

・「私はウソ…いや、動揺していません」…ウソつきの言い間違い

・裁判でも証拠採用される言語分析法

・信用できる発言内容の特徴

・本音を引き出す「七つの質問」

・スパイに口を割らせる!?-シャーフ・テクニック本邦初公開

・<コラム4>ウソを見抜きたいと思う心に潜む危険なバイアス

 

 第二章の表情、第三章のボディーランゲージ、そしてこの第四章では声と言葉からウソや心理を推測する方法に迫ります。声の大きさ、高低、話す速さなどの声の非言語情報、言葉そのものを意味する声の言語情報の特徴的なパターンに様々な感情や心理が生じます。特に本章では、一つに、「話者の真偽を推測するための科学的な言語分析法」に力を入れ、説明しています。私たちは、非言語に比べ、言語操作能力に優れています。したがって、往々にして、言葉そのものに焦点を当てた方がウソを推測しやすいと言えます。本章でその方法を詳述しました。

 

 一方、この言語操作能力の高さゆえに、言語分析法はカウンターミ―ジャーに弱い、つまり、言語分析法に熟知したウソつきに出し抜かれてしまう可能性が高くなる。しかし、ウソに伴う非言語特徴を知っているウソつきでもそれを漏洩させないでいることが難しいことが知られています。そこで本章で力を入れた二つ目の内容。それは、質問法です。「本音を引き出す『七つの質問』」にて、これまでの章で説明してきた内容と本章の内容を統合し、真偽推測する方法を説明します。真偽推測のための考案された質問によって、ウソに伴う非言語や言語のサインが生じやすくなるのです。質問法をマスターすることで、言語サインから、言語分析法に対しカウンターミ―ジャーを受けても非言語の漏洩から、真偽を推測することが出来るようになるのです。

 

 こうした方法論を、抽象的な視点でルールとしてまとめつつ、実在の事件(例えば、某大臣の公職選挙法違反疑惑や某村長のセクハラ疑惑、某市議の政務活動不正疑惑…お気づきかと思いますが、ウソは権力、お金、性に絡むことがほとんどなのです)や弊社で行った実験事例に応用し、具体的にルールをどう使えばよいのか、どんな視点でとらえるとよいかを説明しています。

 

 本章で最も伝えたいことは、「非言語サインが生じる度に意味のある説明を求めたり、言葉尻をつかまえて人の心理を強引に解釈してはいけない」ということです。私たちはウソ以外の様々な理由で、微表情や非言語サインを発します。様々な理由で言い間違えや不明瞭な発言をします。ウソや心理を高い確度で推測するには、適切な質問刺激に対する反応としての非言語・言語サインの組み合わせの力学を理解・実践する必要があるのです。

 

 第五章については、また次回。

 

 これより前回に続き、私の著作過程について書きたいと思います。前回、「書く内容は決まっているのになかなか文章にならない」そんなことが生じる、ということを書きました。どうするか。私は、2-3週間前後で一章分書くわけですが、書いている途中に、「このトピックどう書こう」と悩むことがあります。章を書き始めるときは、章の全体像が見えていて一気に書き上げられる自信があったにも関わらず、ときに筆(指ですが)が止まります。

 

 そんなとき、2-3日間、時間が許せばもっと長い暇をかけて、これまで読んだ論文や本を読みなおし、関連する新しい知見を再度収集し、新刊を読み、トピックに関連する知見を俯瞰的に眺めます。2-3日関連するトピックに頭を沈殿させ、考え続けると、ある瞬間「つながる」のです。重要なのは、(緊急な業務を除いて)一心に2-3日間それだけしか考えない、ということです。デスクにいるときも、歩いているときも、シャワーを浴びているときも、食事をしているときも、ずっとです。具体的な量で示せば、論文なら20本くらい。書籍なら4~5冊程度でしょうか。集中して一気に知識を入れなおし、新しい知識も入れ、整理し、熟考し続けると、ある瞬間、筆が一気に走り出すのです。トピックに量・質ともに十分な文章の出来上がり、となります。

 

 皆さんも似たよう体験があると思います。何か問題があり、それを解決したいとき。問題に関わる知見を集中的に頭に入れる。例えば、2-3冊関連書籍を読めば、自分の全く知らない話題だとしても全体像をつかむことが出来ます。さらに数冊読めば、問題に対する具体策が浮かんで来る、そんな体験に似ていると思います。

 

 点と点が線で結びつく。ひとえにこれは、論理力だと思います。関係ある知識同士がくっ付く。これまで人生かけて鍛え、醸成されてきた論理力だと思います。ただ、この辺りの体験は自分の中でまだ具体的に文字化しきれていないため、またどこかで整理し、紹介させて頂ければと思います。

 

 そんな知識と論理力が組み合わさった清水建二著『裏切り者は顔に出る-上司、顧客、家族のホンネは「表情」から読み解ける』中央公論新社(2022年)は、2月9日発売です。ご予約はこちらから。

 

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では、また次回。

 

 

清水建二

第4回『裏切り者は顔に出る-上司、顧客、家族のホンネは「表情」から読み解ける』制作裏話

 

 2022年2月9日『裏切り者は顔に出る-上司、顧客、家族のホンネは「表情」から読み解ける』が中央公論新社より発売されます。清水建二の5年ぶりの単著となります。本日は、本書の制作ストーリー第4回目。第三章について紹介したいと思います。

 

 第三章は、「ジェスチャーを見抜く」です。具体的には次の通りです。

 

・ボディーランゲージにまつわる大きな誤解

船場吉兆の会見で観られた「意外」なボディーランゲージ

・ポスチャー/マニピュレーター/イラストレーター/エンブレムと微動作(マイクロ・ジェスチャー

・話を合わせているだけ?それとも本当に同じ意見?

・いつも誤解されているあなたへーウソをついていると勘違いされるしぐさ

・<コラム>ウソのサインでない動きもウソのサインになることがある!?

 

 ボディーランゲージは、表情に比べると大まかな感情分類にはなりますが、動きが大きいため観察しやすい、という利点があります。ですので、他者の動きを少し意識的に見てみると、多彩なボディーランゲージが、ほぼ常時といってよいほどの頻度で使われていることに気づきます。ウソとの関連で言いますと、世の中にはウソをついていると誤解されるボディーランゲージがあります。ボディーランゲージから、直感的に、あるいは経験則的にウソを見抜こうとするとき、ほとんどの場合において、ウソと関係のないボディーランゲージをウソのサインと捉え、他者を誤解してしまうことが知られています。本章では、この陥穽を乗り越え、科学的裏付けのあるウソのサインの捉え方と様々なボディーランゲージの解釈の方法を説明しています。

 

 本章で最も伝えたいこと。それは、「よくあるハウツー本やYouTuberに解説されているほど、ボディーランゲージからウソを見抜くことは簡単・単純ではなく、ウソや人の心の奥底に迫るには、ボディーランゲージの機能を理解し、深い推論・熟考を経る必要がある」ということです。ボディーランゲージの観察から即座に解釈できる人の心の状態もありますが、ウソ推測となると自身の人間関係や対象人物の人生にも関わってきますので、正しい科学的知識は言うまでもなく、解釈には慎重にも慎重を重ねる必要があると考えます。

 

 第四章については、また次回。

 

 さて、今回は、私の著作過程について書きたいと思います。制作裏話第1回目で書きましたが、私は、2-3週間前後で本書の1章分約24,000字を書きます。その後1週間前後で推敲。そして提出。2-3日後に編集Tさんから軽いコメント。コメント後、次の章の執筆を始めます。最終的には、12万字書き、2万字削り、10万字の原稿となりました。

 

 主な執筆期間は半年前後です。半年間、先のサイクルを繰り返します。2-3週間前後で約24,000字の執筆量は、多いかどうかわかりませんが、私は通常業務でも連載やメルマガ、専門誌への投稿依頼、実験レポートの執筆など他にも原稿があり、実際の執筆量はさらにあります。具体的に、ある各月連載は約2,000字、月2回投稿のメルマガ(2021年10月廃刊)は、1回につき約5,000字、ある専門誌は約6,000字、ある実験レポートは約25,000字でした。不定期で依頼される時事ネタなどの分析記事は、おおよそ3,000字。執筆期間中、本書の原稿含め、毎月の執筆量は、おそらく40,000~50,000字程度ではないかと思います。また、私の業務は、ものを書く以外にもあります。セミナーや研修実施やその準備、コンサルタント業務、各種打ち合わせ等々あります。

 

 本を執筆したいと思われる方への参考として申し上げたいことは、こうしたメインの執筆(ここで言うところの『裏切り者は顔に出る-上司、顧客、家族のホンネは「表情」から読み解ける』)以外にどれだけ時間や労力をかけているか、逆に言えば、メインの執筆にかけられる時間や労力はどれくらいかを、ある程度知り、執筆計画を立てる必要がある、ということです。そうしないと、原稿の締切に間に合わなくなります。特にトピックによっては、知識や経験のストックが乏しいことがあったり、逆に情報が多すぎて取捨選択に悩む場合があると思います。そうしますと、原稿を書くために追加取材や資料調査・整理、多角的な考察をすることになり、時間がかかります。こうした時間も考慮する必要があります。

 

 執筆に関わる様々なことを考慮し、「この期間にこれだけ書こう、書ける」と決め、執筆を始めます。しかし、「書く内容は決まっているのになかなか文章にならない」そんなことが、時々、生じます。書いては消し、また書いては消す。「もっとよい内容になるのではないか」「もっとよい書き方があるのではないか」「もっとわかりやすいネタはないか」「この知見は最新だけど、どれだけ実用性があるか」そんなことを考え続け、中々、筆が進まないことがあります。さて、どうしたらよいか。続きは、次回。

 

 そんな試行錯誤の中、完成しました清水建二著『裏切り者は顔に出る-上司、顧客、家族のホンネは「表情」から読み解ける』中央公論新社(2022年)2月9日発売です。ご予約はこちらから。

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では、また次回。

 

 

清水建二

 

第3回『裏切り者は顔に出る-上司、顧客、家族のホンネは「表情」から読み解ける』制作裏話

 

 清水建二の新刊『裏切り者は顔に出る-上司、顧客、家族のホンネは「表情」から読み解ける』が、2022年2月9日中央公論新社より発売されます。本日は、本書の制作ストーリー第3回目。第二章について紹介したいと思います。

 

 第二章は、人類共通の表情、異なる表情について説明しています。具体的には次の通りです。

 

・なぜ表情に注目するのか?

・万国共通の七つの表情

・準万国共通の九つの表情

・万国共通の表情と準万国共通の表情の機能上の違い

・その他の色々な顔の表情

アメリカンスマイルとジャパニーズスマイル

・ドーピング疑惑のアスリート

・【練習問題1】会議についていけていないのは誰?

・【練習問題2】最終案に渋々同意しているのは誰?

・【練習問題3】複雑な感情の彩を表情観察から見抜く

・<コラム>「モナリザ」は何を考えていたのか?

 

 なぜ表情に注目するのか?それは、非言語の中で最も情報量が多いからです。また、言葉の意味が文字通りなのかそうではないのか、表情が教えてくれます。普段、コミュニケーションをとっていれば自然と身につく表情を読む力。様々な表情と感情の関係。表情が自分の感情や他者の行動に及ぼす影響。表情から心を読んでいるのか。ウソは顔に書いてあるのか。どんな表情が万国共通でどんな表情がそうでないのか。こうした何となく知っているようでちゃんとは知らないことを、現時点でわかっている最新の科学知見からクリアに説明しています。

 

 本章で私が最も伝えたいことは、「表情は感情の表れであり、心そのものではない。なぜその感情が表情として生じたのかを考えることで、心の中を推測することが出来る」ということです。このことについて、「ドーピング疑惑のアスリート」のところで実例を基に説明しています。

 

 有名アスリートにドーピング疑惑がかけられました。「ステロイドを使ったことがありますか?」という質問に対し、「いいえ」とアスリート。「いいえ」と答えながら、軽蔑の微表情が生じます。軽蔑は優越感とも言い換えられます。

 

・ドーピングしたもののその証拠が出てこない自信があるゆえに優越感なのでしょうか?

・ドーピングしていないにも関わらず疑いの目を向けている質問者や世間に対して軽蔑しているのでしょうか?

 

 このとき、このアスリートは心の中で何を思っていたのでしょうか。表情から感情を理解し、感情から心を推測する方法を本章の中で詳述しています。また、豊富な表情画像を用いて、様々な表情を説明していますので、文章だけでは伝わりづらい表情の微妙な違いをビジュアルから理解して頂けるようになっています。

 

 第三章については、また次回。

 

 さて、今回も編集・校正のプロたちの技紹介です。本日とり挙げる箇所は、第二章のトピック「アメリカンスマイルとジャパニーズスマイル」にて、表情が万国共通に見えない原因を説明している箇所です。

 

 「このように感じられる(表情が万国共通に見えない)原因は、主に2つに集約できます。」から続く文です。

 

清水が書いた元原稿

「一つは、どんな状況においてどんな表情を表出させるべきかについて文化的なルールがあるということ、もう一つは、刺激に対してどんな感情が想起されるかは個人・文化によって異なることがあるということです。一つ目の原因として、どんな状況においてどんな表情を表出させるべきかについて、文化毎に決められたルールの存在が挙げられます。これを表示規則と言います。」

 

この文が…

 

編集Tさんの治し反映原稿

「一つは、どんな状況においてどんな表情であるべきかについて文化的なルールがあるということ、もう一つは、刺激に対してどんな感情が想起されるかは個人・文化によって異なることがあるということです。一つ目として、どんな状況においてどんな表情であるべきかが文化によって決められていることを、表示規則と言います。」

 

こうなります。そして、さらに2回の校正が入り…

 

校正が反映された最終原稿

「一つは、どんな状況においてどんな表情であるべきかの文化的なルールは違うということ、もう一つは、刺激に対してどんな感情が想起されるかは個人・文化によって異なることがある、の二点です。一つ目の、どんな状況においてどんな表情であるべきかが文化によって定まることを、表示規則と言います。」

 

 となります。筆者が伝えたいメッセージはそのままに、読みやすい文章へと変化していくプロセスがわかります。個人的には、「一つ目の原因として、」以降の文の変換が好きです。私のワードで作成された原稿が、紙面に印刷され、その印刷された文字を組みかえ、追加、修正されるのですが、文を一から書くのではなく、元の文を組みかえていくのです。これなかなか凄いと思うのです。「伝えたいメッセージは、こういうことですよね?だから、文をこうしました」と言い、一から文を書いた方が簡単に思うのです。それをせず、筆者の文体を残し、修正提案をする。秀逸。

 

 そんな秀逸な編集・校了者が担当してくれた清水建二著『裏切り者は顔に出る-上司、顧客、家族のホンネは「表情」から読み解ける』中央公論新社(2022年)2月9日発売です。ご予約はこちらから。 

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では、また次回。

 

 

清水建二