微表情

フラッシュのように一瞬で表れては消え去る微妙な表情、微表情。このブログでは、微表情、表情、顔を始めとした非言語コミュニケーションの研究や実例から「空気を読む」を科学します、「空気」に色をつけていきます。

タッチの「差」で観る二人の関係

 

恋愛関係の男女はお互いにどのように触れているのでしょうか?公の場における男女の接触行為の観察から、両者の関係性の深さによって接触の仕方に「差が」あることがわかっています。

 

観察からわかったことは、

 

①真剣なデートをしているカップルは、気軽なデートをしているカップルや夫婦よりも、2倍多くお互いに触れる傾向にある。

②気軽なデートをしているカップルの場合、全体的にお互いに触れる量は同じくらいだが、男性の方から女性に先に触れる、一方で夫婦の場合、それが逆転し、女性の方から男性に先に触れる傾向にある。

 

ということです。

こうしたタッチの性、差が生じる理由はなぜでしょうか?

 

真剣なデートをしているカップルがお互いにより多く触れる理由は、親密性をお互いがより多く伝え合おうとしている結果だと考えられています。触れるという行為は、それが望まれていないとき不快感を引き起こします。接触が望まれているか・望まれていないかの空気を真剣なデートのカップルは読んでいると言えるでしょう。気軽なデートのカップルはまだその空気感がわからないゆえに接触の間合いともゆうべきものがわからないのです。

 

では夫婦は?長い間、一緒にいれば空気感わかるでしょ?ということですが、夫婦の方は接触が少なるなる理由がなんとなくわかるのではないでしょうか。なぜ真剣なデートのカップルよりも夫婦の接触は少ないのか?

 

真剣なデートをしているカップルは、お互いに親密性を伝え合うためだけに触れあっているわけではなく、公にお互いの絆をアピールするためにも触れ合っています。特に手を握ったり、腕、腰に触れたり、つかんだりするという結びつきを示す接触をより多く行います。

 

つまり、夫婦の場合、すでに結婚という忠誠を誓い合っているため、お互いの親密性や絆を公にアピールする必要はないからだと考えられています。また触れ合わなくてもお互いを近くに感じられる、さらに公の場よりもプライベートな場で触れ合う傾向にあるからだと考えられています。

 

ただ興味深いのが、真剣なデートのカップルよりも夫婦の方が接触の仕方が似ているということです。単純に言えば、夫婦間ではミラーリングが起きているということです。真剣なカップルはタッチの量で、夫婦はタッチの質で親密性を伝え合っているのだと言えるでしょう。

 

次の疑問、なぜ関係性の深さによって先に「手を出す」順番が異なるのでしょうか。社会的コントロールと親密性が関係していると考えられています。

 

関係性が浅い時期、関係性をリードするのは「男性」という社会的コントロールを重視する考えがあるゆえに、気軽なデートでは男性の方から触れ始めることが許される・想定されると考えられています。しかし、関係性が発展してくれば(例えば、結婚に至れば)、社会的なコントロールよりも親密性の方が重視され、非言語シグナルを用いるのが得意な女性の方が、リードして男性に触れるようになるのだと考えられています。

 

ちなみにこれは欧米人のカップルを対象とした研究結果です。日本人の場合はどうなんでしょうかね?直感的には、現代の日本人も同じように接触し合っているような気がしませんか?

 

引き続き、調査していきたいと思います。

 

 

清水建二

参考文献

Guerrero, L. K., & Andersen, P. A. (2008). Public Touch Behavior in Romantic Relationships between Men and Women. In L. K. Guerrero, & M. L. Hecht (Eds.), The nonverbal communication reader: Classic and contemporary readings (3rd ed., pp. 217-225). Prospect Heights, IL:Waveland Press.