微表情

フラッシュのように一瞬で表れては消え去る微妙な表情、微表情。このブログでは、微表情、表情、顔を始めとした非言語コミュニケーションの研究や実例から「空気を読む」を科学します、「空気」に色をつけていきます。

言葉と表情とが合わないとは?―言動不一致のロジック【解説編】

 

今回は先週の問題の解説編です。こちらの図を使って解説させて頂きます。

 

f:id:micro-expressions:20170826000914p:plain

 

感情は、覚醒―眠気、快―不快の次元でわけられると考えられています。覚醒するほど「目が開く」状態、快になるほど「筋肉が弛緩する」状態だとイメージすればわかりやすいと思います。この4象限に感情を並べると図のようになることがわかっています。

 

言動不一致の判断は、この図を用いると判別しやすいです。原則的には、言葉と表情の両方が同じ象限にない場合、言動が一致していないと考えます。

 

例えば、幸福表情と「嬉しい」という言葉は、覚醒―快という同じ象限にあるため、言動一致です。幸福表情と「悲しい」という言葉は、幸福表情は覚醒ー快、「悲しい」は睡眠―不快にあるから不一致です。悲しみ表情と「ほっとする」という言葉は、悲しみ表情は睡眠―不快、「ほっとする」は睡眠―快にあるから不一致です。こうした要領で考えます。

 

この原則の例外が驚きです。驚きは、覚醒次元上の快・不快の中間点にいます。原則的には驚きは、驚き表情と「驚く」という言葉とのセットでしか、言動一致とみなせません。しかしこの厳密な定義だとコミュニケーションをする上で、使い勝手がとても悪く実用的ではないため、解釈の範囲を広げます。驚きを全ての感情の中心と考え、驚いた後に感情の評価がなされると考えます。つまり、「驚いた」という言葉とセットに生じる表情は全て言動一致と考えられるわけです。実用的な観点から言うと、目の前の相手が「驚きました」と言ったとき、あるいは驚き表情をしたとき、それで観察や会話を終えてはいけないのです。驚きの後に来る感情が、その人がある刺激に対して抱いた評価だからです。

 

食事をしている人が、「意外な味~」と感想を述べるとします。意外という言葉は、驚きです。意外に美味しかったのか、不味かったのか、そのあとの評価が肝心というわけです。

 

さて前フリの解説が長くなりました。本問題に当てはめて考えましょう。

 

問1:悲しみ表情+このような結果になるなんて思ってもいませんでした。

「思ってもいない」という言葉は意外性・反予想を意味するため、驚きです。驚きは全て言動一致ですので、〇ということになります。

問2:幸福表情+このような結果になるなんて思ってもいませんでした。

問1と同じ理由で〇です。

問3:恐怖表情+私はこの職に就くために十分な準備をしてきました。

恐怖表情は覚醒―不快です。「十分な準備」という言葉は自信を意味します。自信をエネルギッシュな状態と捉えれば覚醒―快、安心ととらえれば眠気―快です。いずれにせよ言動不一致なので×です。

問4:軽蔑表情+チームの中では私がトップ成績です。

軽蔑表情は優越感の現れですので快です。「トップ」というポジティブな言葉も快ですので、言動一致ということで〇です。

 

言動不一致を論理的に考えることは意外に難しい場合があります。ときに感情を理性的に見つめ、感情をマネジメントするレールを作りましょう。感情を有益に活用することが出来るようになるでしょう。

 

 

清水建二

参考文献

“A Circumplex Model of Aflect” by James A. Russell, Journal of Personality and Social Psychology, 1980, 39, p. 1168.