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微表情

フラッシュのように一瞬で表れては消え去る微妙な表情、微表情。このブログでは、微表情、表情、顔を始めとした非言語コミュニケーションの研究や実例から「空気を読む」を科学します、「空気」に色をつけていきます。

表情観察からウソを推定する方法

 

前回のブログでは「表情分析からウソを推定する方法」を紹介させて頂きました。今回のテーマは「表情観察からウソを推定する方法」です。分析と観察とでは何が違うのか?ざっくり言うと、カメラで記録して精査するか目視でリアルタイムかの違いです。

 

前回ご紹介した表情分析の分析プロセスは、録画された対象人物の表情筋の動きを時間をかけて精査する手法です。どれくらい時間をかけるかというと、1分の動画を1時間かけてコード化することもあります。

 

本日は、リアルタイムで対象人物の表情を観察し、ウソを推定するプロセスをご紹介します。リアルタイムで行うには、前提条件として対象人物と対面する必要があります。対象人物と対面しながら、オープン質問、表情観察、戦略質問、情報の統合という4つのフェーズを繰り返します。

 

①オープン質問

➡オープン質問とは「はい」「いいえ」や短い単語で答えることの出来ない質問法のことを言います。例えば「〇〇の出来事について、あなたが知ってることを出来るだけ詳しく教えて下さい。」といった質問法です。

 

②表情観察

➡オープン質問の回答を述べている対象者の表情を観察します。対象者の言葉と表情が一致しない、もしくは、特定の微表情が表れたら、その箇所を覚えておきます。状況が許せば、メモをとってもよいでしょう。原則的に対象者がオープン質問の回答を終えるまで、質問者が話をさえぎってはいけません。

 

分析で時間をかけていた表情筋の変化をリアルタイムで認識することが可能なの?と疑問を持たれる方がいるかも知れません。当然、分析の時より精度は落ちますが、リアルタイムで何の機器も使わずに微表情を検知することは可能です。方法や効果などについて知りたい方は参考文献に書かせて頂いた論文(Matsumoto & Hwang, 2011)を読んで下さい。

 

また分析のときは表情分析マニュアル(FACS)の手順に沿い、コンマ毎に表情筋を分析しますが、リアルタイムのときは、写真をとるかの如く表情をとらえます。専門的なトレーニングにより表情筋の組み合わせの形状と感情との関係が目に焼きついているため、対象人物の表情筋の動きを瞬間にとらえ、またそれをとらえた瞬間に感情との結びつけが出来るのです(とは言え、FACSによる表情分析よりは精度は落ちます)。

 

③戦略質問

➡言葉と表情とが不一致の話題や特定の微表情が表れていた話題について、その他の話題よりも優先的に追加的な質問をします。質問の仕方は様々ですので、ここでは書ききれませんが、要は、対象人物の感情のブレの理由を明らかにしていくフェーズとなります(もちろん、ここで表情観察の結果のみを頼りにする必要はありません。声・動作で気になる箇所があればそこを追加的に質問するべきですし、単純に不明瞭な内容があれば、それについて質問するべきです)。

 

④情報の統合

➡①~③で得られた対象人物の感情の流れや回答内容に不明瞭な点や矛盾がないか、証拠などで証明可能な回答内容はどの話題かを確認します。その後は①~③の繰り返しをし、回答内容の裏取りとなります。

 

こんな感じです。ウソを推定する、と題に書きましたが、実は積極的にウソを見抜こうとするのではなく、効率的になるべく多くの情報を正確に収集しようとしているのです。

 

伝統的な警察の取り調べ手法を尋問アプローチと呼びますが、今回ご紹介したアプローチは情報収集アプローチと言い、科学的に尋問アプローチより効果的だと証明されている真実解明のための手法です(Vrijら, 2015)。

 

 

清水建二

参考文献

Matsumoto, D. & Hwang, H. S. (2011). Evidence for training the ability to read microexpressions of emotion. Motivation and Emotion, 35(2), 181-191.

Vrij, A., Leal, S., Mann, S., Vernham, Z., & Brankaert, F. (2015). Translating theory into practice: Evaluating a cognitive lie detection training workshop. Journal of Applied Research in Memory and Cognition, 4, 110-120.