微表情

フラッシュのように一瞬で表れては消え去る微妙な表情、微表情。このブログでは、微表情、表情、顔を始めとした非言語コミュニケーションの研究や実例から「空気を読む」を科学します、「空気」に色をつけていきます。

表情分析からウソを推定する方法

 

これまで拙著やセミナー、ブログなどでウソの見抜き方について扱ってきましたが、今一度、このプロセスについて明確にしたいと思います。

 

表情分析を用いたウソの推定方法は、表情分析、科学知見の統合、個人差の検討という3つのフェーズから成ります。3つが揃えば揃うほど正確な分析が可能となります。

 

①人物の表情分析

➡対象人物の表情を表情分析のマニュアル(FACS)に基づいてコード化します。次にそのコードを感情に変換します。必要に応じて、表情の非対称性・強度・持続時間なども記録しておきます。

 

②科学知見の統合

➡これまで科学的に証明されている「ウソと関連のある人間の表情の動き・感情」と①でわかった表情の動き・感情とを比較します。例えば、①で「幸福」の微表情が検出されたとしましょう。ウソをつくとき、微表情が出現しやすいという科学知見とウソをつく人間の感情と関わりのある「騙す喜び」という科学的にわかっている感情の存在から、①の分析対象人物から検出された「幸福」の微表情は、ウソに関連している可能性があると考えます。

 

ここで分析対象人物が「幸福」の微表情を表出していたときに話していた話題について、他の話題(ウソに関連する表情・感情が表出していない話題)よりも優先的に精査するという段階に移行します。依頼が画像分析のみで私自身が最後まで真相解明に携わらなければ、「〇〇の話題について優先的に精査して下さい。理由は…」という私の分析レポートがクライエントに通知されることになります。

 

これが一番簡易的なウソ検知における表情分析の活用法です。これ以降は表情という情報以外の情報からウソの核心に迫っていきます。尋問が可能ならば戦略的質問法のアプローチを用いたり、ウソの可能性が考えられる話題について証拠収集することになります。

 

しかし、表情分析のみから可能な限り厳密にウソを推定したい場合で、かつ豊富に分析動画が入手可能ならば、③まで行います。

 

③個人差の検討

➡ウソをつくとき、多くの人は統計的に〇〇のような行動をとる可能性が高いが、今回の分析対象人物は例外かも知れない、という個人差の問題を考慮する段階です。具体的には、分析対象人物が確実にウソをついているときと確実にウソをついていないときの表情を分析します。そして①②の結果と比較するのです。

 

例えば、分析対象人物がウソをついているときは「幸福」の微表情が表出し、ウソをついていないときは「眉間にしわを寄せる」表情を表出することがわかったとします。①②の結果から分析対象人物はある話題のとき「幸福」の微表情を表出していたことがわかっています。このことから分析対象人物はウソをついている可能性が高いと推定し、精査ポイントをより高い精度で絞り込むことが出来るのです。

 

ここまで厳密に分析したとしても、この結果がウソを断定することやウソの証拠になるわけではありません。表情分析からウソを検知しようとする試みは、あくまで捜査や調査を効率的に進める上での補完的なツールであることは言うまでもありません。

 

 

清水建二