微表情

フラッシュのように一瞬で表れては消え去る微妙な表情、微表情。このブログでは、微表情、表情、顔を始めとした非言語コミュニケーションの研究や実例から「空気を読む」を科学します、「空気」に色をつけていきます。

清水建二の本棚③

 

本日ご紹介させて頂きたい私の本棚にある一押し書籍は、こちら。

インド仏教はなぜ亡んだのか―イスラム史料からの考察

インド仏教はなぜ亡んだのか―イスラム史料からの考察

 

 

そしてもう一冊はこちら。

戒名と日本人―あの世の名前は必要か (祥伝社新書 (049))

戒名と日本人―あの世の名前は必要か (祥伝社新書 (049))

 

 

この2冊の書籍の共通点は、比較、です。

 

『インド仏教はなぜ亡んだのか』は、同時代・同地域の出来事が記録され、かつそれぞれ異なる文明の視点から記録されている『チャチュ・ナーマ』と『大唐西域記』という文献を比較・検討し、インド仏教の衰退を解明するという手法をとっています。

 

様々な文献や情報を比較する手法は、研究の世界でもビジネスの世界でも当たり前のことなのですが、ものすごい昔の出来事に対し、質の高い文献を発見し、詳細に類似点や相違点を比較する著者の能力に感銘を受けます。

 

『戒名と日本人』は、仏教における戒名とキリスト教における免罪符を比較し、同様の機能を持つことを歴史的な観点から論じているのが興味深いです。免罪符はなくなったけど、戒名はなぜ残り続けているのだろうか、など考え始めると西欧と日本の宗教観や慣習、気質までに思考が導かれ、想像・創造力が刺激されます。

 

本日紹介させて頂いた書籍は、2冊とも保坂俊司先生によるものです。私が学部2年生の時に軽い気持ちで履修登録したのが保坂先生の比較宗教学でした。みるみるうちに先生の講義に引き込まれ、先生のあらゆる講義を受講させて頂くようになりました。先生の講義や著作からは、宗教学そのものの知識を学ばせて頂いたのはもちろんのこと、異なる文明観やそれぞれの視点から同じ出来事を論じてみる、という大局的な比較視点を学ばせて頂きました。

 

そうした視点が私が大学院で学際的な研究を志すことを加速させ、現在、私が表情分析をする際にも生きているのだと思います。

 

目的のある学びはもちろん大切ですが、目的のない学びから得られた知識や経験は、脳内にまとまりのない点として存在し続け、いつの間にか線となり面となり、大きな影響力を持って人生を豊かにしてくれるのではないかと、感じています。

 

 

清水建二