微表情

フラッシュのように一瞬で表れては消え去る微妙な表情、微表情。このブログでは、微表情、表情、顔を始めとした非言語コミュニケーションの研究や実例から「空気を読む」を科学します、「空気」に色をつけていきます。

偏見に潜む評価尺度

 

みなさんは、自身が属している集団とそれ以外の別の集団に対して、どんな感情を抱きますか?

 

みなさん自身が女性なら男性、大人なら子ども、A会社ならB会社、中間層なら富裕層貧困層、健常者なら障害者、仏教徒なら異教徒、日本人なら外国人、前者が自身の属している集団で後者が別集団と考えてみて下さい。

 

考えて頂きたい感情は、次の4つです。

 

妬み…?????

憐れみ…?????

軽蔑…?????

誇り…?????

 

どんな集団にどんな感情を抱くでしょうか?

 

いくつかの調査で選択肢として挙げられた集団は、高齢者、主婦、富裕層、キャリアウーマン、生活保護受給者、薬物依存者、そして自分の属している集団です。

 

これらの調査によると、

 

妬み…富裕層、キャリアウーマン

憐れみ…高齢者、主婦

軽蔑…生活保護受給者、薬物依存者

誇り…自分の属している集団

 

となりました。

これはなぜでしょうか。

 

ステレオタイプ内容モデルというものがあります。このモデルは、集団に対して抱かれる偏見の核となる感情を教えてくれます。このモデルは、集団を有能さと心の温かさの2つの軸で評価します。

 

自分の属している集団と競争状態にある別の集団を私たちは脅威と感じ、その集団を心の冷たい人々とステレオタイプ化します。逆に、危害を加えない、競争状態にない別の集団を心の温かい人々とステレオタイプ化します。そして実際に脅威を与える能力があれば、有能だとされ、なければ有能ではないとされます。

 

この心の温かさの高低と有能さの高低の組み合わせが偏見を構成する感情を生み出すといいます。

このモデルに当てはめて先の集団が実験参加者にどう評価されたかをみてみます。

 

妬み富裕層、キャリアウーマン

心が冷たく有能

憐れみ…高齢者、主婦

心が温かく無能

軽蔑生活保護受給者、薬物依存者

心が冷たく無能

誇り…自分の属している集団

心が温かく有能

 

このカテゴリー分けは事実というわけではなく、人々がどのように集団をステレオタイプ化しているか、という話です。意識・無意識問わず、私たちはこのような評価軸で集団をステレオタイプ化する傾向にあるようです。

 

心の温かさの高低と有能さの高低という2つの軸を正確に観る姿勢を保つことで、少しでも偏見で人を評価しなくてすむのでしょうか。自分の持つ偏見というものを考えさせられてしまう調査結果です。

 

 

清水建二

参考文献

Fiske, S. T., Cuddy, A. J. C., Glick, P., & Xu, J. (2002). A model of (often mixed) stereotype content: Competence and warmth respectively follow from perceived status and competition. Journal of Personality and Social Psychology, 82, p.878-902.