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微表情

フラッシュのように一瞬で表れては消え去る微妙な表情、微表情。このブログでは、微表情、表情、顔を始めとした非言語コミュニケーションの研究や実例から「空気を読む」を科学します、「空気」に色をつけていきます。

FACSが計測しているもの

表情分析

 

視認可能な顔の動きを計測するためのツールにFACS(ファクス)というものがあります。本ブログでも時々、紹介させて頂きました。本日はFACSについて寄せられた質問の中でも最も多く頂く疑問にお答えしたいと思います。

 

FACSの概要については弊社HPをご覧ください。

http://www.microexpressions.jp/mission.html

 

さて、本題です。よく頂く疑問とは、

 

FACSを習得すると人の感情が読みとれるようになるのか?

 

というものです。

 

答えとしては、感情把握にはFACSの習得と論文の多読・熟読が必要、という回答になります。順を追って理由を説明します。まずFACSというものは、視認可能な顔の動きを包括的に計測するためのツールです。つまり、感情の表れである表情だけでなく、認知的な顔の動き(例えば、熟考しているときや関心を抱いているとき)、顔で行うジェスチャー、何の意味も特定されていない顔の動き、などあらゆる顔の動きを計測することができます。

 

しかし、FACSマニュアルに書かれていることは、顔の動きをコードする方法のみです。つまりFACSを習得するということは、顔の動きを計測するためのモノサシの使い方をマスターする、ということになります。FACSマニュアルの習得だけでは、顔の動きをコード化しても、それが何を意味しているのかはわからないのです。

 

例えば、眉間にしわを寄せ、唇をプレスしている人物がいるとします。これをFACSでコード化すると、4C+24B、となります。この4C+24Bは顔の動きの客観的なコード化なのですが、このコンビネーションにどんな意味があるのかはFACSマニュアルだけではわかりません。このコードのコンビネーションや単独の意味を知るためには、FACSに付属しているInvestigatorガイド及び顔の動きの意味について扱っている多くの学術論文を読む必要があります。

 

そうした論文を読むことで、4には、感情としては「怒り」、認知的な顔の動きとしては「熟考」、24には、感情としては「怒り」と「感情抑制」、認知的な顔の動きとしては「認知的な負担の高まり」という意味があることがわかります。

 

そしてさらに顔の動きの意味を限定するには、これらのコードが起きているときの継続時間や状況、タイミングなどを考慮することが必要となります。

 

以上のように顔の動きの意味を正確にかつ客観的に分析するには、FACSマニュアルの習得と様々な論文の知識の裏付けがあって初めて可能になります。

 

一朝一夕にはまいりませんが、それだけ私たちの多彩な心の中を客観的に分析・推定することは大変です。

 

しかし、FACSマニュアルを取得し、論文を読めば読むほど、そしてその知見を現実世界に当てはめることで、人間の感情や心の不思議が増々わかり、時にわからなくなり、凄く面白いと私は思っています。

 

 

清水建二

参考文献

Ekman Paul, Friesen Wallace, Hager Joseph (2002) Facial action coding system: a technique for the measurement of facial movement. Consulting Psychologists Press, Palo Alto, CA