微表情

フラッシュのように一瞬で表れては消え去る微妙な表情、微表情。このブログでは、微表情、表情、顔を始めとした非言語コミュニケーションの研究や実例から「空気を読む」を科学します、「空気」に色をつけていきます。

サービス業、スマイルで仕事のミスを誤魔化せる?

 

サービス業とスマイルの関係について前に書いたブログが、最近なぜかアクセスが高まっています。

(本ブログ内「もう一度はじめから丁寧にーなぜサービス業にスマイルが必要なのか?」を参照して下さい。)

 

そこで、サービス業の中にあるスマイルネタについて久々に書かせて頂きたいと思います。

 

今回のテーマは、「仕事のミスはスマイルで誤魔化せる?」です。

 

Grandeyら(2005)の実験からご紹介します。

 

ホテルのフロントスタッフを2つのグループに分け、通常の業務を行うときに次のことをするようにお願いしました。

 

グループ1への指示:お客様に心からおもてなしをしたいと強く想い、お客様に笑顔を向け、アイコンタクトを意識して業務にあたること(「本心からの笑顔」群と呼びます)

グループ2への指示:感情なしの営業スマイルで業務にあたること(「営業スマイル」群と呼びます)

 

この条件の下、それぞれのスタッフはフロント業務にあたります。

その様子はビデオで記録されました。

その後、この録画ビデオを様々な人に見てもらい、スタッフのサービスに対する満足度を評価してもらいます。

 

この実験の面白いところは、業務の最中、フロントスタッフがときどき業務上のミスを犯す、というところです(業務上のミスのイメージとしては、フロントに来たお客様に挨拶をし忘れる、お客様に間違えた情報を与える、予約の確認でお客様の名前を間違える、などです)。

 

さぁ、「本心からの笑顔」群の業務と「営業スマイル」群の業務、これに業務上のミスが加わると、サービスの満足度にどのような違いが生じるのでしょうか?

 

実験の結果、

評定者のサービス満足度の高い順に並べると…

 

「本心からの笑顔」+正常業務 > 「営業スマイル」+正常業務 > 「営業スマイル」+業務ミス > 「本心からの笑顔」+業務ミス

 

でした。

 

何のミスもなく正常に業務が行われた場合、営業スマイルより本心からの笑顔の方が満足度が高くなるのは予想通りですが、業務ミスが生じた場合、この関係が逆になるという結果は、実に興味深いですね。

 

なぜですかね?

 

某市役所で職員さんに怒っていた住民の方のセリフに尽きると思います。

 

「こっちが怒っているのに、ヘラヘラするな!!」

 

…。

 

怒られるのにも適切な表情があるのですね。。。

(知りたいサービス業の方は、弊社の研修をぜひ!)

 

結論!

 

ホテルのフロントスタッフは…

 

ミスをスマイルでは誤魔化せない

 

 

清水建二

参考文献

Grandey, A., Fisk, G., Mattila, A., Jansen, K. J., & Sideman, L. 2005. Is service with a smile enough? Authenticity of positive displays during service encounters. Organizational Behavior & Human Decision Processes, 96: 38-55.