微表情

フラッシュのように一瞬で表れては消え去る微妙な表情、微表情。このブログでは、微表情、表情、顔を始めとした非言語コミュニケーションの研究や実例から「空気を読む」を科学します、「空気」に色をつけていきます。

表情と交渉―笑顔は信頼度を高めるか?

 

営業トークをしている方々の表情を観察することが多々あります。基本的にはみなさん笑顔がデフォルトです。本当の笑顔、愛想笑いと色々ですが、ニコニコ顔で営業トークをしています。

 

そんななか、時々、ほとんど笑顔を見せず、真顔で営業活動をしている方に出会います。その方たちに「なぜ真顔なのですか?」「真顔によって営業が上手く運ぶ秘訣などあるのですか?」と聞いたことがあります。

 

返ってきた答えは、

 

「ヘラヘラした笑顔より、真顔の方が真剣さが伝わって良いかな、って思うんです。」

 

とおっしゃっていました。

 

この科学的根拠は?

 

Krumhuberら(2007)の研究によれば、

 

本当の笑顔>愛想笑い>真顔

 

の順で人は他者に信頼を感じると言います。

 

もう少し詳しく説明すると、本研究では、実験参加者に信頼できそうなパートナーを選んでもらい、そのパートナーと協力して賞金獲得額を増やすゲームをしてもらいます。

 

実験の結果、実験参加者がゲームのパートナーとして選択する順番が、本当の笑顔を見せる人物、次に愛想笑いの人物、最後に真顔の人物となりました。

 

真顔より愛想笑いの方が信頼度は高く映るのですね。

 

これはなぜでしょうか?

 

私が思うに、楽しくもないのに笑う、愛想笑いをするということはエネルギーがいることです。そんなエネルギーを使ってまでも、あなたに信頼して欲しい、というシグナルを送り、それを受け取った人は、その心意気に対し無意識に同調するのではないか、なんて考えています。

 

「愛想笑いを他人に向けるのはダメですか?」とよく聞かれることがありますが、この研究結果から言えば、信頼を得る手段としてはOKだと言うことになります。また私は、個人的には、自分に向けられた愛想笑いを「あ~この人は、私に気遣ってくれているのだな~」と感じ、ありがたい気持ちになり、その人の優しさを感じたりします。

 

だから、愛想笑いは、本当の笑顔には適わないけど、悪者ではない、ということです。

 

しかし、留意点があります。お察しの通り、この研究は人物の信頼度を表情から計測しているだけです。現実の場では、セールスマンの信頼度が高いからといって商品が売れたり、契約が取れたりするわけではないということです。セールスの成功には信頼度以外にも様々な要因がありますからね。ですのでこの研究から言えることは、笑顔はセールスや契約成功確率を高める必要条件の一つである、ということでしょう。またこの研究には、冒頭のヘラヘラした笑顔が加味されていません。その項目があれば、人の信頼度は、

 

本当の笑顔>愛想笑い>真顔>ヘラヘラした笑顔

 

になっていたかも知れません。

この図式は、私がビジネスをしていて直感的に感じていることですし、きっとそう感じられている方もいると思われます。

 

でも、ヘラヘラした笑顔…といものは何となくわかるのですが、科学実験の中でどう定義付けするのか、難しそうです。

 

冒頭の真顔の営業戦略、科学的に調査することで様々な発見がまだまだ埋まっていそうです。

 

 

清水建二

参考文献

Krumhuber, E., Manstead, A. S. R., Kappas, A., Cosker, D., Marshall, D., & Rosin, P. L. (2007). Facial dynamics as indicators of trustworthiness and cooperative behavior. Emotion, 7, 730–735.