微表情

フラッシュのように一瞬で表れては消え去る微妙な表情、微表情。このブログでは、微表情、表情、顔を始めとした非言語コミュニケーションの研究や実例から「空気を読む」を科学します、「空気」に色をつけていきます。

危険表情①

 

暴力がなされる直前の表情、というものが研究されています(Matsumoto & Hwang, 2014)。未来の暴力行動が直前の表情から予想され得る、ということです。この研究知見は、暴力行為に立ち向かう警察官、VIPを守る警護官、クライエントを守る警備員などに有用です。また、私たち普通の人々にとっても、万が一に起きてしまうかも知れない暴力被害を未然に回避する可能性を高められるため、役に立ちます。

 

どんな研究かご紹介します。

 

暴力を行う人の表情には、その暴力行為の直前に「怒り」表情が現れます。しかし、「怒り」表情にも様々な種類があり、ある「怒り」表情が現れても暴力がなされるとは限りません。そこでどんな「怒り」表情が、危険度が高いか、すなわち暴力行為に結び付きやすいのか、ということが実験によって調査されました。

 

様々なバリエーションの「怒り」表情、「怒り」表情と混同されやすい「軽蔑」「嫌悪」表情写真が用意されました。

 

これらの様々な表情写真を、暴力行為を経験したことのあるアメリカの法の執行官、韓国の法の執行官、アメリカの大学生、そして暴力行為を経験したことのないアメリカの大学生に見てもらい、暴力行為の直前に見る・見られるであろう表情がどれかを選んでもらいました。

 

実験の結果、暴力行為を実際に経験したことのある人々は、偶然より高い確率である「怒り」表情を選択しました。この表情を危険表情と呼ぶことにします。一方、暴力行為を経験したことのない人々は、特定の表情を危険表情であると選択することが出来ませんでした。

 

暴力を経験した人々が、異なる文化圏を超えて危険表情を正しく選択しているということは、危険表情は、万国共通の「暴力」シグナル、ということが言えそうです。同時にその他の「怒り」「軽蔑」「嫌悪」表情を危険表情として選択していないということは、危険表情には暴力につながる特徴的な表情が内在していると考えられます。

 

それでは危険表情とはどんな表情なのでしょうか。

長くなってきました。続きは次回ご紹介しようと思います。

 

 

清水建二

参考文献

Matsumoto, D., & Hwang, H. C. (2014). Facial signs of imminent aggression. Journal of Threat Assessment and Management.