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微表情

フラッシュのように一瞬で表れては消え去る微妙な表情、微表情。このブログでは、微表情、表情、顔を始めとした非言語コミュニケーションの研究や実例から「空気を読む」を科学します、「空気」に色をつけていきます。

ウソ検知の科学⑪―警察官のウソ検知能力

ウソの見抜き方

 

私たち一般人のウソ検知能力を測定する諸実験によると(Vrij, 2000)、私たちのウソ検知率は、56.6%であることがわかっています。ウソかどうかを正しく判別することのできる偶然の確率は50%なので(※)、私たちのウソ検知能力は偶然レベルを少し上回る程度であることがわかります。

 

56.6%という数字の内訳をみると、実験参加者が真実を述べている人物を正しく判定できた割合は、67%であることがわかりました。一方、ウソを述べている人物を正しく判定できた割合は、44%であることがわかりました。

 

私たちは、人の言葉を真実の証言であると偏って識別する傾向(真実バイアス)を持っているようです。もし私たちが日々、周りの人々の話す言葉の真偽について一つ一つ疑問を感じていたら、日常生活を円滑に送ることなど不可能です。それゆえに私たちは、人が話す言葉の内容を真実であるという前提を置き、コミュニケーションを図っているのですね。

 

私たち一般人のウソ検知能力に比べ、犯罪者を始めとする嘘に日々接している職務に従事している人々、すなわち、警察官、シークレットサービス、CIA、FBI、税関職員、ポリグラフ技師などのウソ検知力は、どの程度なのでしょうか。結論から言うと、その能力にはバラツキがあるものの、往々にして私たちの能力と大差がないことがわかっています。私たち一般人と違うのは、現象に対する捉え方の傾向です。法の執行官の方々は、人の言葉をウソの証言であると偏って識別する「嘘バイアス」があることがわかっています。(参考までに参考文献の一番下に日々嘘に接するプロフェッショナルらのウソ検知能力をまとめました。)

 

しかしウソ検知実験は多くの場合、大学の実験室において行われ、ウソをつく人々は大学生です。これは警察官が経験するような犯罪に関するウソとは状況が違い過ぎると言うもっともな批判があります。それでは、本当の犯罪に関する証言のウソを警察官らはどのくらいの精度で検知できるのでしょうか。次回のテーマと致します。

 

 

※ウソ検知力を測定する多くの研究では、実験参加者に、ウソをついているか真実を述べているか、どちらかの証言をしている人物が映っているビデオ映像を見せ、どちらかを判定してもらいます。その人物がウソをついているか、それとも真実を述べているかの二者択一の質問なので、何も考えなくても偶然に正解する確率は50%だということです。

 

 

清水建二

 

付録

 

表 法の執行官のウソ検知能力

 

正答率(以下のカテゴリーの数字の単位は%)

真実

合計

法の執行官(a)

64

42

53

シークレットサービス(b)

 

64

 

ポリグラフ技師(c)

 

56

 

警察官(d)

 

56

 

CIA(e)

66

80

73

シェリフ(f)

56

78

67

法の執行官(g)

54

48

51

警察官(h)

58

31

45

法の執行官(i)

 

50

 

パトロールに従事する警察官(j)

20

60

40

刑事(k)

51

46

49

警察官(l)

 

54

 

警察官(m)

70

57

64

警察官(n)

 

51

 

(a)DePaulo & Pfeifer, 1986. (b)(c)(d)Ekman & O’Sullivan, 1991.

(e)(F)(g)Ekman, O’Sullivan, & Frank, 1999. (h)Kohnken, 1987.

(i)Meissner & Kassin, 2002. (j)Porter, Woodworth, & Birt, 2000.

(k)Vrij, 1993 (l)Vrij & Graham, 1997 (m) Vrij & Mann, 2001a

(n)Vrij & Mann, 2001b

 

参考文献

Vrij, A. (2000). Detecting lies and deceit: The psychology of lying and the

implications for professional practice. Chichester: John Wiley.

Vrij, Aldert (2000) Detecting lies and deceit: the psychology of lying and implications for professional practice. In: Wiley series in psychology of crime, policing and law . Wiley, Chichester.

DePaulo, B. M., & Pfeifer, R. L. (1986). On-the-job experience and skill at detecting

deception. Journal of Applied Social Psychology, 16, 249-267.

Ekman, P., & O'Sullivan, M. (1991). Who can catch a liar? American Psychologist,

46, 913-920.

Ekman, P., O'Sullivan, M., & Frank, M. G. (1999). A few can catch a liar. Psychological Science, 10, 263-266.

Koehnken, G. (1987). Training police officers to detect deceptive eyewitness statements: Does it work? Social Behavior, 2, 1–17.

Meissner, C. A., & Kassin, S. M. (2002). "He's guilty!": Investigator bias in judgments of truth and deception. Law and Human Behavior, 26, 469-480.

Porter, S.,Woodworth, M., & Birt, A. R. (2000). Truth, lies, and videotape: An investigation of the ability of federal parole officers to detect deception. Law and Human Behavior, 24, 643–658.

Vrij, A. (1993). Credibility judgments of detectives: The impact of nonverbal behavior, social skills, and physical characteristics on impression formation. Journal of Social Psychology, 133, 601–610.

Vrij, A., & Graham, S. (1997). Individual differences between liars and the ability to detect lies. Expert Evidence, 5, 144–148.

Vrij, A., & Mann, S. (2001a). Who killed my relative? Police officers’ ability to detect real-life high-stake lies. Psychology, Crime and Law, 7, 119–132.

Vrij, A., & Mann, S. (2001b). Telling and detecting lies in a high-stake situation: The case of a convicted murderer. Applied Cognitive Psychology, 15, 187–203.