微表情

フラッシュのように一瞬で表れては消え去る微妙な表情、微表情。このブログでは、微表情、表情、顔を始めとした非言語コミュニケーションの研究や実例から「空気を読む」を科学します、「空気」に色をつけていきます。

人は見た目が9割?―自殺者の顔編

 

この人何か信頼できそうだな。

この人何か賢そうだな。

この人何か怪しいな。

この人何か信仰を持っていそうだな。

…等々

 

知らず知らずのうちに人の見た目の印象だけから私たちは日々、目の前の人の特性を推定しています。古くは顔相学の領域で、現代では心理学の領域で、「人の顔のつくりから人の特性を把握する」という試みが様々になされています。

 

実は、冒頭に挙げた例の全てに関して、「顔写真だけからそれらの特性を判断出来る」ということが数々の心理学の実験から実証されています。

 

以前、ブログで微表情から自殺の徴候や精神病の傾向がある程度予想できるということを書かせて頂きました。本日は、動いている顔ではなく、写真から自殺者を予想できるかという謎に挑んだ研究をご紹介させて頂きたいと思います。

 

カナダのトロント大学の研究者らによって以下のような実験がなされました。

膨大な卒業アルバムの中から自殺をした人の顔写真と自殺をしていない人の顔写真をピックアップします。

その顔写真の情報のみから、判定者ら(大学生or精神病などに詳しい専門家)にどちらが自殺した人なのかを判定してもらいます。

 

果たして、顔写真を見ただけで、判定者らは自殺者を特定出来たのでしょうか?

 

実験の結果、

 

・大学生は、自殺をした人としていない人を55%の精度で見分けることができた。

・専門家の正答率は大学生と変わらなかった。

・自殺者の顔と自殺者でない者の顔の違いは、「衝動的攻撃性」が「感じられる」かどうかであった。

 

ということがわかりました。

 

55%の精度というのは、ヤマ勘でやれば50%ですので、それよりは良い成績なのですね。専門家も大学生も同じ精度ということこら、動かない表情から人の特性を見抜く能力を、私たちは根源的に持っているのかも知れないことがうかがい知れます。自殺者の顔には「衝動的攻撃性」が「感じられる」という知見はあくまで判定者の感想です。しかしこの「衝動的攻撃性」の有無を証明する心理テストを自殺者が生前受け、その結果などが存在すれば、それらのデータを比較することで、感想の正しさがより科学的な知見に近づきますね。理論的には、自殺という現象は自己に対する「衝動的な攻撃」ですので、それが顔に表れるという現象がかなりはっきりと説明出来るようになれば、自殺予防に非常に役に立つ知見になりそうです。

 

顔だけで判断するならば、人は見た目が5.5割のようですね。

 

 

清水建二

参考文献

Kleiman, S., & Rule, N. (2012). Detecting Suicidality From Facial Appearance Social Psychological and Personality Science Social July 1, 2013 4:453- 460.