微表情

フラッシュのように一瞬で表れては消え去る微妙な表情、微表情。このブログでは、微表情、表情、顔を始めとした非言語コミュニケーションの研究や実例から「空気を読む」を科学します、「空気」に色をつけていきます。

もう一度はじめから丁寧にーなぜサービス業にスマイルが必要なのか?

 

笑顔の接客というキーワードは、接客業に関わる方々にはあまりに当たり前すぎて、

なぜ笑顔の接客が重要なのかについて疑問すら感じられないかも知れません。

 

なぜ、どのように笑顔の接客が重要なのか?

笑顔の接客において注意しなくてはいけないことは何なのか?

 

こうしたことを今一度意識することで、マネージャー層の方々にとってはサービスの質を問い直し、現場の方々にとっては日々の接客に携わる心の在り方を考えるきっかけになると思います。

 

実験室での実験や実際の店舗を使ったフィールドワークで行われた様々な研究において以下のようなことがわかっております。

 

Q: なぜ笑顔の接客が重要なのでしょうか?

A: 店員さんの笑顔の接客は、お客さんの表情を穏やかにし、お客さん自身の表情がお客さんの気分を高揚させます。このプロセスにおいて、店員さんの人柄、誠実さ、専門性、サービスの質、サービスに対する満足度、もう一度来店したいか等々に対してお客さんの心にプラスの影響を及ぼすのです。

 

Q: どのように笑顔の接客がこうしたプラスの帰結を生みだすのでしょうか?

A: 人の感情というのは無意識のうちに他の人に感染するということがわかっています(感情伝染理論)。店員さんの笑顔に対し、笑顔に関わるお客さんの表情筋は無意識に反応し、お客さんの表情もほころびます。笑顔の持続は、心地良い気分を生み出します。この気分状態で見聞きしたものに対して、時に様々な誘導が介入しつつも、プラスの評価が下される傾向があります。

 

Q: 笑顔の接客は万能薬なのでしょうか?

A: 笑顔の接客は決して万能薬ではありません。まず笑顔の接客があったとしても、状況に合わない笑顔や偽物の笑顔は逆効果になることがわかっております。偽の感情ということに関して言うと、人は幸福でもないのに笑顔を持続的に作り続けなくてはいけない状況に置かれてしまうと、本当の感情が破壊される危険があることが報告されています。また笑顔の接客というプラスの効果を打ち消けしてしまうようなマイナス要因があれば、当然、ダメです。したがいまして、効果的に笑顔の接客を行うには、気合や精神論だけでは壁にぶつかります。誰もが実行でき、一定の効果をもたらす科学的な手法が必要になってくるのです。

 

当たり前になっていることをもう一度はじめから丁寧に。

かつては見えて来なかった気づきが得られるかも知れません。

 

 

清水建二

参考文献

Barger, P. B./Grandey, A. A. (2006): Service with a smile and encounter satisfaction:

Emotional contagion and appraisal mechanisms. In: Academy of Management Journal, 49:

1229-1238.