微表情

フラッシュのように一瞬で表れては消え去る微妙な表情、微表情。このブログでは、微表情、表情、顔を始めとした非言語コミュニケーションの研究や実例から「空気を読む」を科学します、「空気」に色をつけていきます。

カチが等価ではない理由

 

自分の買った宝くじの番号が当りの番号と

一つだけ違う場合と全く番号が違う場合、

どちらが悔しいですか?

 

前者と答える方々が大半だと思われます。

同じ外れでもその感じ方は違いますよね。

 

似たような現象が表情にも表れることがわかっています。

オリンピックの銀メダリストと銅メダリストが二人並んだとき、

表情だけからどちらがどちらのメダルを獲得したかわかると思いますか?

 

そうです、それがわかるのです!

ポイントは、銀メダリストと銅メダリストの笑顔です。

どちらがニコニコ笑顔をしていると思いますか?

 

正解は銅メダリストです。

 

そのロジックは先の宝くじの話と似ています。

銀メダリストは「もう少しで金メダルを獲得できたのに…」という悔しさの方が、その競技で世界2位になったという喜びよりも大きいのです。一方、銅メダリストは「もう少しでメダルを取り損ねた、少なくともメダルは獲得できた!」と考え、3位という順位でも十分に嬉しいと感じるのです。

 

この現象は、いくつかの実験によって実証され、銀メダルもしくは銅メダルを獲得した選手のインタビュー中の表情からも確認されています。

 

人間は感情の生き物だということが、改めて感じられる研究ですね。

客観的に優っていても、主観的には残念な想いを持ち、

同じ価値、同じ勝ちでも、その感じ方は個々人の相対化された主観に左右される…。

 

皆さんの目の前に「成功者」と呼ばれている方はいますか?

人がうらやむような成績を残し、優秀な社員さんはいますか?

その人の表情を見てみて下さい。

人が思うほどその人たちは「幸福」な状態ではないかも知れません。

そんなときベストなタイミングでベストな声をかけられるのが、

「察する」能力、高い微表情検知力の持ち主ではないでしょうか。

 

 

清水建二

参考文献

Medvec VH, Madey SF, & Gilovich T (1995). When less is more: counterfactual thinking and satisfaction among Olympic medalists. Journal of personality and social psychology, 69 (4), 603-10