微表情

フラッシュのように一瞬で表れては消え去る微妙な表情、微表情。このブログでは、微表情、表情、顔を始めとした非言語コミュニケーションの研究や実例から「空気を読む」を科学します、「空気」に色をつけていきます。

「恥ずかしい」は得?

 

「その笑顔に腹が立つんだ!!」

 

ようなのです。

 

ある課長さんがおっしゃっていたのですが、部下の方がクレーム対応をするとき、怒っているお客さんに笑顔で対応し、その怒りにさらなる油を注ぐことになってしまったというのです。

 

「時と場にあった表情をすることが重要ですね。そこでの笑顔は完全に逆効果です。」

 

そのときの私の解答です。

 

サービス業に限らず、人と接するときにはその場にあった言葉遣いはもちろんのこと、適切な表情が表れていないと人に誤解を与える危険性があります。

 

あるアンケート調査の結果以下のことがわかっています。

 

公衆の面前でスベって転んでしまった人の表情が、

「怒り」の場合、その人は「反社会的」な人と見られる傾向にあります※。

「恥」の場合、その人は「社会的」な人、「反社会的」な人と、人によって判断が分かれる見解がとられ、人に同情心を引き起こします。

「羞恥」の場合、その人は「社会的」な人と見られる傾向にあり、人に愉快な気持ちを引き起こします。

「笑顔」の場合、その人は「社会的」な人と見られる傾向にあり、人に愉快な気持ちを引き起こします。

 

⇒12月6日のブログでご紹介したように「恥」は「羞恥」より問題の深刻度が深い時に表される表情なので、今回のケースの場合、「恥」表情は、行き過ぎ感のある表情なのだと思われます。「スベったくらいで恥の意識!付き合いにくい人かもしれない!」という印象を人によっては感じるのでしょう。

 

また多くの裁判の記録から、被告が裁判中、「悲しみ」や「後悔」の表情を示していると、無罪判決、もしくは短い刑期が下される傾向にあり、模擬裁判による実験では、「羞恥」や「恥」表情を浮かべる被告に対して短い刑期が下される傾向にあることがわかっています。

 

表情によって人に与える印象、誘発させる感情、下される刑期までも影響を受けるのですね。

 

「羞恥」や「恥」感情が表情に表れる・表すというのは、「私は社会的なつながりを大切にしています。」「今回のようなミスを繰り返しません。」「私もばつの悪い思いはしたくありませんし、みなさんにももう気を使わせたくありません。」「許して下さい。」というシグナルなのです。

 

したがって、冒頭のように相手が怒り心頭のときは、「羞恥」より問題の深刻度を理解している「恥」表情の方が適切な表情であると考えられます。

 

 

※今回の調査では対象となる感情群に含まれていなかったのですが、一般的に「怒り」は人に「恐怖」感情を引き起こします。

 

 

清水建二

参考文献

Dacher Keltner, Randall C. Young and Brenda N. Buswell. (1997). Appeasement in human emotion, social practice, and personality. Aggressive Behavior. Special Issue: Appeasement and Reconciliation Volume 23, Issue 5, pages 359–374.