微表情

フラッシュのように一瞬で表れては消え去る微妙な表情、微表情。このブログでは、微表情、表情、顔を始めとした非言語コミュニケーションの研究や実例から「空気を読む」を科学します、「空気」に色をつけていきます。

患者さんの表情から改善度を予測する

 病気と表情の関係性について様々な研究があります。本日は、精神障害を抱える患者さんの事例をご紹介したいと思います。この研究では患者さんの診察時の表情を分析することで何がわかるかを調査したものです。研究結果は以下の通りです。

 

 

初回診察時の患者の表情から精神状態の改善を予測できるか?

 予測できる可能性がある。初回診察時に「軽蔑」もしくは「本心ではない笑顔」を他の患者と比べて多く見せる患者は、他の患者に比べて精神障害の病状が改善しない。

 

精神障害の症状によって患者の表情は異なるのだろうか?

 症状によって患者が見せる表情は異なる。重度のうつ病患者は軽度のうつ病患者に比べ、「悲しみ」「嫌悪」を多く見せ、「本心でない笑顔」をあまり見せない。そう病患者はうつ病患者と比べ、「本心からの笑顔」も「本心でない笑顔」も多く見せ、「怒り」「嫌悪」「悲しみ」はあまり見せない。統合失調症患者はうつ病、そう病患者と比べて、「恐怖」を多く見せ、他の感情はあまり見せない。

 

同じ症状の精神障害でも患者によって表情は異なるのだろうか?

 うつ病患者を対象に分析したところ、「悲しみ」はうつ病患者に共通してみられる表情であるが、「恐怖」及び「幸福」表情の表出に関しては個人差が目立つ。

 

 

 ①②③それぞれの研究結果より、患者さんの表情をよく観ることの大切さが伺えます。私が特に注目したいのは①です。「軽蔑」とは他者に対する自己の優越感を示す感情です。お医者さんのアドバイスや話を患者さんが「軽蔑」しているということは、さしずめ「この医師は自分のことを何も分かっていない。」「医師の言うことは受け入れたくない。」という解釈ができるでしょう。お医者さんのアドバイスに素直に耳を傾けない、傾けられないことが結局は自分を苦しめる結果を招いてしまうということになることをこの研究は物語っているように思えます。

 

ただしこの研究からは、「軽蔑」感情が精神病を引き起こす要因の一つなのか、精神病が「軽蔑」感情を引き起こす要因の一つとなるのか、その方向性はわかりません。患者さんは、本当は素直になりたくてもなれないのかも知れません。

 

これからも病気と表情の関係性について追いかけていきたいと思います。

 

 

清水建二

参考文献

Paul Ekman, David Matsumoto, Wallance V. Friesen, “Facial Expression in Affective Disorders,” WHAT THE FACE REVEALS (2005):429-439.