微表情

フラッシュのように一瞬で表れては消え去る微妙な表情、微表情。このブログでは、微表情、表情、顔を始めとした非言語コミュニケーションの研究や実例から「空気を読む」を科学します、「空気」に色をつけていきます。

目は口ほどにものを言う?

昨日はセミナーに参加して下さった45名の方々、本当にありがとうございました!

会場の熱気や会場で直接頂いた皆様のお言葉に今も感動しております。

現在、皆様から頂いたアンケートに目を通させて頂いているところです。アンケートの内容を適切にフィードバックさせて頂けるよう今後とも精進させて頂きたいと思います。

 

今回のブログは、丁度昨日のセミナーでも頂いたご質問に関する内容です。

 

「顔の表情」以外の非言語コミュニケーションはどういうふうにメッセージを放つのか?

 

です。

 

 本ブログは「空気を読む」を掲げておりますので、「顔の表情」以外も徐々に取り上げさせて頂きたいと思います。

 

 そこで、本日のテーマは「目」です(顔の一部じゃん…というご指摘ごもっともです。顔の筋肉の動きではないので、ご容赦下さい)。

 

 様々な席で表情分析のコンサルタントであると自己紹介をしますと、「じゃぁ、ウソとかも見抜けるんですか?ウソつきは目をそらすとか言いますものね。」と尋ねられることが多々あります。

 

そこで本日は、後者の疑問、「ウソつきは目をそらすのか」について考えていきたいと思います。

 

 ウソ研究の大家DePaulo博士の研究チームは、1970年代から2000年代初頭にかけて行われた50以上もの「ウソと視線の動きの関係」を調査した研究を分析しました(DePaulo, Lindsay et al, 2003)

 

分析の結果…

 

「ウソつきが視線をそらすこともあれば、真実を言う人が視線をそらすこともある。逆もまたしかり。」

 

といった結論に達しました。つまり、「目をそらしたからといってウソつきであるとは断言できない」ということです※。

 

 しかし、私が上に述べたことは、あくまでも「ウソ探知において、視線を頼りにすることは、一般に言われているほどには、出来ない」ということです。「視線がコミュニケーションにおいて意味がない」ということではありません。

 

 ヒトや動物の視線に関する研究は多く行われており、どのような視線が、支配・権力関係、攻撃意図を示すのか等が明らかにされていますし(Fehr & Exline, 1987など)、文化によって視線の意味合い・使い方が異なるということも分かっています(Watson, 1970、大坊, 1983など)。視線はコミュニケーションにおいて無視できない重要な要素なのです。

 

コミュニケーションにおける視線の役割についてはまたの機会にご紹介出来ればと思います。

  


清水建二

※近年我が国日本で行われた「虚偽検出に関する基礎的研究」(谷口ら, 2011)によると、実験室の中で行われた模擬犯罪の場で窃盗を働いたものは、自分が盗んだ盗品から目を背けるということがわかりました。しかしこの実験では視線の動きを特殊な機械によって測定しました。人間の目でそれを測定することは難しいようです。


参考文献

大坊郁夫 (1983) 「男女の対人的コミュニケーション・パターンの研究」 『日本心理学会第47回大会発表論文集』p772

谷口泰富 小野洋平 石岡綾香 軽部幸浩 (2011) 「虚偽検出に関する基礎的研究」 『駒澤大学心理学論集』 13 p1-9.

Fehr, B.J., & Exline, R.V. (1987). Social visual interactions: A conceptual and literature review. In A. W. Siegman & S. Feldstein (Eds.), Nonverbal behavior and communication Vol.2, p225-326.

DePaulo, B.M., Lindsay, J. L., Malone, B.E., Muhlenbruck, L., Charlton, K., & Cooper, H. (2003). Cues to deception. Psychology Bulletin, 129, p74-118.

Watson, O.M. (1970). Proxemic behavior: A cross-cultural study. The Hague, Netherlands: Mouton.