微表情

フラッシュのように一瞬で表れては消え去る微妙な表情、微表情。このブログでは、微表情、表情、顔を始めとした非言語コミュニケーションの研究や実例から「空気を読む」を科学します、「空気」に色をつけていきます。

『顔は口ほどにモノを言う!ビジネスに効く 表情のつくり方』に込めた想い④―執筆のプロセス舞台裏

  

私は職業作家ではないので、普段の仕事の合間や休日に執筆することになるのですが、執筆中は、その本に何を書くべきか、何が書けるか、何を書きたいのか、そんな想いに常に憑りつかれております。

 

歩いているとき、電車に乗っているとき、本を読んでいるとき、講義をしているとき、寝ているときでさへも、頭の中はほとんど執筆のことに関連付けられた思考が巡っています。

 

そんな日々を過ごしていると、ふと、抽象的な想いが具体的な言葉となる瞬間があります。乗る、と表現したらよいのでしょか。スタックしていた思考が動き出し、一気に筆が走り出します(本当はキーボードですけど)。一気に5,000字くらいは筆が進みます。ビジネス書は全体で通常8~10万字くらいなので、2~3時間で全体の1/20を書き上げられることになります。

 

ところで、書店のビジネスコミュニケーションや心理学のコーナーに足を運ぶと、他者の表情や想いを読む本に比べ、自分を伝える本の方がはるかに多いことがわかります。

 

一見すると、非言語コミュニケーション分野では「伝える」知見の方が「読む」知見よりも多くのことがわかっているようですが、実は逆です。

 

科学知見の世界では、「読む」知見の方が「伝える」知見よりもはるかに多くのことがわかっています。

 

それでも書店に「伝える」系の書籍の方が多い理由は、おそらく、ビジネス経験者にとって読むスキルより伝えるスキルの方がまとめやすいということと(消極的な)読むスキルよりも(積極的な)伝えるスキルを獲得したいという一般の方々の需要が多いからだと思います。

 

「読む」に比べて「伝える」の方が、直感的に理解しやすく、効果も実感しやすいからなのでしょう。実際に研修コンテンツをセールスする担当の方々に話を聞くと、異口同音の答えが返ってきます。

 

そんな事情の中、私の強みを活かすには?と考え(私一人の「伝える」経験では、例えば20年のビジネス体験を持つ筆者の方々に経験的にはかなわないので)、既存のビジネス書では適切に書かれていない科学的な「伝える」知見と多くの方々―私自身の体験や私の受講生さん・クライアントの体験―の「伝える」経験とを合わせた書籍を執筆させて頂くことになったのです。

 

既存のビジネス書に欠けている、もしくは誤解を招いている「伝える」科学知見は何だろう?

「伝える」科学知見が日常やビジネスの「伝える」世界にどこまで応用できているだろう?

 

そんなことを考えながら執筆しました。

 

科学と経験のハイブリッド

 

この度の伝える書籍でも形に出来ました。

 

 

清水建二

紹介図書

 

ビジネスに効く 表情のつくり方 (顔は口ほどにモノを言う!)

ビジネスに効く 表情のつくり方 (顔は口ほどにモノを言う!)

 

 

面接テクニック・シーズン1-⑤IIE面接テクニックの構造DEF

 

本日はIIEテクニックの構造DEFについて紹介したいと思います。

 

Discrepancies―不整合

不整合とは、言語内及び、言語と非言語との間に生じる食い違いのことです。言語内の不整合は、被面接者の発言内容と物的証拠・記録、発言内容内での食い違いが一般的です。言語と非言語との間における不整合は、被面接者が口では「悲しい」と述べていても、表情が「悲しみ」になっていないときなどを意味します。こうした不整合も「ホットスポット」となります(「ホットスポット」については前回の記事を参照して下さい)。

 

Engagement―関わり

関わりとは、面接者が面接中に被面接者に関わるプロセスのことを意味します。被面接者が誠実に正確な情報を発言できるように面接官は面接の環境を適切に作り出す必要があります。優秀な面接官とは、自身が話すより被面接者の話をよく聞き、被面接者とラポールを形成することで心地良い環境を作り上げる能力があることが知られています。

「被面接者の話をよく聞く」というのは、質問の仕方が適切である、ということに通じます。状況に応じて、クローズド・クエッションとオープン・クエッションを使い分け、誘導尋問にならないように注意しつつ、戦略的な質問を用い記憶をたどる手助けをしたり、詳細な情報を提示できるように質問を投げかけるべきです。

面接の場を心地良い場にするには、被面接者とのラポールが大切です。ラポールの形成の仕方は様々ですが、被面接者との類似性を見つけたり、被面接者に共感を示したり、被面接者に好まれる話題を面接中に織り交ぜるのが有効です。また非言語的な側面で言うと、被面接者の姿勢やしぐさを模倣するミラーリングや被面接者の腕や手に軽く触れる行為もラポールを形成する有効な手段です。

また対話の仕方も威圧的にするべきではなく、丁寧な言葉使いを意識して、被面接者に関わるべきです。

 

Follow-up―フォローアップ

被面接者から得られた情報を物理的な証拠や記録、その他の情報と照合することがフォローアップです。面接者が被面接者に与える影響に意識を配り、被面接者のベースラインを構築し、そのベースラインからの変化をとらえ、言語・非言語の不整合を精査し、被面接者と適切に関わっていく。こうしたプロセスを経て得られた情報の精度を確かめるために、その情報に基づき物的証拠・記録を探す必要があります。情報と物的証拠・記録との整合性がとれてはじめて、面接の役割が終了します。

 

実施する面接が重要であればあるほど、A~Fの構造を意識・徹底するべきですが、面接の重要度や時間・物理的制約に応じて面接の構造を適切に変えられることが肝要です。

 

本日をもって面接テクニック・シーズン1終了です。面接構造という大枠に微表情・動作観察や質問法がどのように関わるかイメージして頂ければ幸いです。ただ、イメージ出来ることと実際に面接を行うこと、訓練することとは、結構、異なります。科学知見を土台にした実践的な訓練・研修をご希望の方は、空気研にぜひご依頼を。

 

それでは、面接テクニック・シーズン2でまたお会い致しましょう。

 

 

清水建二

参考文献

Frank, M. G., Yarbrough, J. D., & Ekman, P. (2006). Investigative interviewing and the detection of deception. In T. Williamson (Eds.), Investigative interviewing: Rights, research and regulation (pp. 229-255). Cullompton, Devon: Willan.

面接テクニック・シーズン1-④IIE面接テクニックの構造ABC

 

本日はIIEテクニックの構造ABCについて紹介したいと思います。

 

Awareness―意識

面接官は、被面接者に向ける意識と同時に自身の見た目や振る舞い、偏見について意識を向けるべきなのです。それは面接官の態度が被面接者に様々な影響を与え、正確な情報を得る妨げになる可能性があるからです。

 

被面接者に向ける意識とは、被面接者が証言している情報が不正確かも知れないということです。被面接者がウソをついている場合もあれば、現実を誤って解釈してしまったゆえに不正確な証言をしている場合もあります。それゆえに、ウソのサインに関する知識だけでなく、人間の記憶メカニズムについて知っておく必要があります。

 

面接官自身に向ける意識とは、面接官は被面接者にどんな印象を与えているか、面接官の振る舞いが被面接者にどう映るか、面接官は被面接者にどんな偏見を抱いているか、などのことです。例えば、女性の面接官ならば、女性であるという理由だけで、男性の宗教原理主義者の被面接者に敵対的な態度をとられるかも知れません。面接官が大柄な男性ならば、被面接者に握手を求めただけで被面接者に恐怖を与えるかも知れません。他にも、面接官の年齢・地位・民族などの要素に意識を向けるべきでしょう。特に、自己と文化背景が異なる被面接者を面接する場面では最も意識的になるべきです。文化によってボディーランゲージの意味が異なり得るため、被面接者の言動を誤解したり、逆に誤解を与えてしまうことがあります。そのため面接官は自分が他者に与える印象について自覚的であると同時に被面接者の背景について知っておく必要があります。また関連することとして、面接官は自身が持つ被面接者に対する偏見にも意識を向けるべきです。被面接者の髪型、肌の色、国籍、宗教などに偏見はないでしょうか。面接官は常に自身が与える影響について意識をしている必要があるのです。

 

Baseline―ベースライン

心理的・認知的負担状況がなにもないときの行動スタイルをベースラインと呼びます。面接官は、被面接者のベースラインを知る必要があります。具体的には、被面接者が、どのような姿勢でいるのか、どんなボディーランゲージやジェスチャーを使うのか、どんな声色で話すのか、どんな言葉遣いをするのかなどについてベースラインを観察するべきなのです。面接中に起こり得るベースラインからの乖離は、被面接者の心理的・認知的変化を教えてくれます。

 

Change―変化

面接官は、被面接者の言動の変化、つまりベースラインからの乖離に注意するべきです。この変化は、被面接者の証言内容に対する自信の無さやウソのヒントとなります。IIEテクニックでは、この変化を「ホットスポット」と命名しています。ホットスポット」とは、ある話題が人に何らかの感情を想起させたり、人に認知的な負担を与えている瞬間を意味します。「ホットスポット」が生じる理由は、人がウソをついている以外にも様々な理由が考えられます。したがって「ホットスポット」を検知した場合、なぜそれが生じたのかに関して注意深く解釈する必要があります。正しく解釈するために「ホットスポット」が生じた話題に関して、被面接者に深堀質問をするアプローチが一般的です。

 

次回、シーズン1最終回!!IIEテクニックの構造DEFについて紹介します。

 

 

清水建二

参考文献

Frank, M. G., Yarbrough, J. D., & Ekman, P. (2006). Investigative interviewing and the detection of deception. In T. Williamson (Eds.), Investigative interviewing: Rights, research and regulation (pp. 229-255). Cullompton, Devon: Willan.

 

 

『顔は口ほどにモノを言う!ビジネスに効く 表情のつくり方』に込めた想い③―執筆のモチベーション舞台裏

 

20168月、『微表情を見抜く技術』(飛鳥新社)、同年11月、『「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く』(フォレスト出版)、そして本年127日に拙著3冊目となります、『顔は口ほどにモノを言う!ビジネスに効く 表情のつくり方』(イーストプレス)を上梓させて頂きます。

 

本日は本書にかけた想い第三弾です。

 

今回は執筆の舞台裏について書かせて頂きたいと思います。

 

今年の5月にイースト・プレスの編集の木下さんという方から本書の企画を頂きました。実は同時期に別の出版社からも企画を頂いておりましたが、私は木下さんと仕事をしたいと考え、木下さんのオファーをお受けし、本書を執筆していくこととなりました。

 

書籍を書くという行為によって、書籍が完成し、世に出回り、感想を頂く、人の人生に良い影響を与えることが出来る、世界が変わる、世界を変える、こうした瞬間や経験を筆者は味わうことが出来ます。こうしたことは筆者に無上の喜びを与えてくれるのですが、それには裏返しがあります。執筆中の身体と精神は擦り切れ、魂は疲弊していきます。疲労とストレスの極致。神経衰弱。

 

そうした中で、後者のマイナスを前者のプラスで凌駕させ得る可能性を持ち、作家の一番の理解者・伴走者になり得る存在が、編集の方なのです。

 

だから編集の方は大切なのです。

 

木下さんは、私のもとへ企画を持って来られる前の段階で、しっかりと私の専門性や志向を理解されていました。企画を見せに来て頂いたときも、私の書きたいことを理解して頂き、私が納得する形で執筆をスタートさせることが出来ました。

 

執筆中も、私の書きたいことと世間が知りたいであろうこととの擦り合わせや、わかりやすい表現、正確な言い回し、など多分にアドバイスをして頂き、一つ一つ納得しながら、満足出来る仕事が出来ました。

 

書籍が形になると編集の方の努力は、筆者の名前に埋もれてしまいます。しかし今回のような素敵な書籍が完成した背景には、イースト・プレスの編集、木下衛さんの並々ならぬサポートがありましたことを、感謝の意味を込めて、ここに記させて頂きたいと思います。

 

筆者:清水建二、編集:木下衛のコラボレーション、『顔は口ほどにモノを言う!ビジネスに効く 表情のつくり方』、ぜひ一人も多くの方に読んで頂きたいと思います。

 

 

清水建二

紹介図書

 

ビジネスに効く 表情のつくり方 (顔は口ほどにモノを言う!)

ビジネスに効く 表情のつくり方 (顔は口ほどにモノを言う!)

 

 

 

『顔は口ほどにモノを言う!ビジネスに効く 表情のつくり方』に込めた想い②―説明知と生活知とのハイブリッド

 

3冊目となります拙著、『顔は口ほどにモノを言う!ビジネスに効く 表情のつくり方』(イーストプレス)を2017年12月7日に上梓させて頂きます。

 

本日は本書にかけた想い第二弾です。

 

私は自分の仕事を通じて自分の考えを世の中に表明したいと日頃より考えています。私の考えとは、科学と経験のハイブリッドを実現し人生を輝かす、です。

 

科学的な知識を膨大に持つものの、それが人生や世の中をより良く生きるための使える知、生活知にならなければ意味がないと考えています。

 

「身振り・手振りを使うと人に伝えたいことを鮮明に伝えられます」と身振り・手振りをしないで伝える人では意味がないのです。

 

一方で、経験的に得られた知識を豊富に持つものの、それが客観的に説明可能な知、説明知にならなければ意味がないとも考えています。

 

「見てればわかるよ」と永久にその知が暗黙知のままの人では意味がないのです。

 

私は信じています。私たちの理性による深い思考と血の通った経験とのバランスがとれているときに、最も人生を輝かせることが出来るということを。

 

そんな想いを今回のコミュニケーション本、『顔は口ほどにモノを言う!ビジネスに効く 表情のつくり方』に込めさせて頂きました。

 

専門書でもない、経験側本でもない、その間隙を往来する科学―経験ハイブリッド本です。知識を体験に、体験を知識に落とし込みたい人に是非、読んで頂きたい書籍です。

 

 

清水建二

紹介図書 

ビジネスに効く 表情のつくり方 (顔は口ほどにモノを言う!)

ビジネスに効く 表情のつくり方 (顔は口ほどにモノを言う!)

 

 

面接テクニック・シーズン1-③IIE面接テクニックの構造

 

本日はIIEテクニックの構造の大枠について紹介したいと思います。IIEでは、面接者が面接場面で不正確な情報を得てしまう総量を最小化させ、正確な情報を取得する総量を最大化させるための6つの大枠があります。それらはアルファベット順に次の6つのキーワードで示されます。

 

・Awareness―意識

・Baseline―ベースライン

・Change―変化

・Discrepancies―不整合

・Engagement―関わり

・Follow-up―フォロー

 

それぞれの説明の前に簡単に内容を紹介します。

 

Awareness―意識とは、面接者自身の態度に向ける意識のことです。自分が被面接者(面接を受けている人)にどんな態度で接しているか、被面接者をどう見ているか、被面接者にどう見られているかに注意せよ、ということです。

 

Baseline―ベースラインとは、被面接者のC以下を正しく観察するために、面接を受けている者のクセをはじめとする普通の行動パターンを把握せよ、ということです。

 

Change―変化とは、被面接者のベースラインから外れる行動に注意し、その原因を質問から明らかにせよ、ということです。

 

Discrepancies―不整合とは、被面接者の言語間や言語と非言語との間にあるズレに注意し、その原因を質問から明らかにせよ、ということです。

 

Engagement―関わりとは、意識より動的な態度のことです。どのように被面接者の話を聞き、どのように観察し、どのように質問しているか、被面接者との関係を良好に保つようにせよ、ということです。

 

Follow-up―フォローとは、被面接者から得られた証言内容を他の証言や物的証拠と照らし合わせ、その妥当性を確認する、ということです。

 

このA~Fの流れを知ることで、表情やボディーランゲージ観察法や戦略的質問法を効果的に活かすことができます。例えば、Bの段階ではオープン質問を多用し、C・Dでは観察法と応答に応じた質問法を使う、と言った要領です。

 

次回以降においてそれぞれの内容についてもう少し詳しく紹介していきたいと思います。

 

 

清水建二

参考文献

Frank, M. G., Yarbrough, J. D., & Ekman, P. (2006). Investigative interviewing and the detection of deception. In T. Williamson (Eds.), Investigative interviewing: Rights, research and regulation (pp. 229-255). Cullompton, Devon: Willan.

 

 

『顔は口ほどにモノを言う!ビジネスに効く 表情のつくり方』に込めた想い①―なぜ表情分析の専門家が表情のつくり方について書くのか?

 

2017年12月7日に私、清水建二の3冊目となる書籍を上梓させて頂きます。題名は、

 

『顔は口ほどにモノを言う!ビジネスに効く 表情のつくり方』

 

です。

 

イースト・プレスさんから出版させて頂きます。

 

今回の書籍がこれまでの拙著と異なる大きな点は、表情のつくり方についての本、ということです。

 

なぜ、表情読み取りの専門家の清水が表情のつくり方を書くのか?書けるのか?

 

それは、表情を「読むこと」と「つくること」は表裏一体だからなのです。

 

表情分析のための専門マニュアルにFACSというものがあります。私はFACSの認定コーダーなのですが、このFACSマニュアルの習得過程に、あらゆる表情筋の動かし方を正確にマスターするトレーニングが含まれております。したがって、FACSを習得している専門家は、自身の表情を自在につくることが出来るのです。

 

「表情筋の動きを自在に操れるからといってそれは表面的な現象に過ぎず、本当の気持ちが込められていない表情など、コミュニケーションをする上で意味ないのでは?」

 

そんな言葉が聞こえてきそうですが、その指摘、至極最もです。

 

だからこそ、本書では表面的な表情筋の動かし方と感情とのつながりを往来しながら、いかに本当の自分の想いや感情を相手に伝えたら良いかということについて科学的知見や経験的ストーリーを用いて、解説させて頂きました。

 

世の中に、美容の専門家やマナー講師、プレゼンの先生が書いた表情のつくり方本があるのならば、表情分析の専門家がきっちり・正確に説明する表情のつくり方本があっても良いじゃないか、というか、あれば、適切に自己表現を望む人の手助けが出来るのではないかと思い、この度書かせて頂くことになりました。

 

表情分析の専門家が書く、これまでありそうでなかった、表情のつくり方本。

 

表情のつくり方と感情との接点を交錯し、感情世界の彩を堪能されたい方に手に取って頂きたい作品です。

 

 

清水建二

紹介図書 

ビジネスに効く 表情のつくり方 (顔は口ほどにモノを言う!)

ビジネスに効く 表情のつくり方 (顔は口ほどにモノを言う!)