微表情

フラッシュのように一瞬で表れては消え去る微妙な表情、微表情。このブログでは、微表情、表情、顔を始めとした非言語コミュニケーションの研究や実例から「空気を読む」を科学します、「空気」に色をつけていきます。

言葉と表情とが合わないとは?―言動不一致のロジック【解説編】

 

今回は先週の問題の解説編です。こちらの図を使って解説させて頂きます。

 

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感情は、覚醒―眠気、快―不快の次元でわけられると考えられています。覚醒するほど「目が開く」状態、快になるほど「筋肉が弛緩する」状態だとイメージすればわかりやすいと思います。この4象限に感情を並べると図のようになることがわかっています。

 

言動不一致の判断は、この図を用いると判別しやすいです。原則的には、言葉と表情の両方が同じ象限にない場合、言動が一致していないと考えます。

 

例えば、幸福表情と「嬉しい」という言葉は、覚醒―快という同じ象限にあるため、言動一致です。幸福表情と「悲しい」という言葉は、幸福表情は覚醒ー快、「悲しい」は睡眠―不快にあるから不一致です。悲しみ表情と「ほっとする」という言葉は、悲しみ表情は睡眠―不快、「ほっとする」は睡眠―快にあるから不一致です。こうした要領で考えます。

 

この原則の例外が驚きです。驚きは、覚醒次元上の快・不快の中間点にいます。原則的には驚きは、驚き表情と「驚く」という言葉とのセットでしか、言動一致とみなせません。しかしこの厳密な定義だとコミュニケーションをする上で、使い勝手がとても悪く実用的ではないため、解釈の範囲を広げます。驚きを全ての感情の中心と考え、驚いた後に感情の評価がなされると考えます。つまり、「驚いた」という言葉とセットに生じる表情は全て言動一致と考えられるわけです。実用的な観点から言うと、目の前の相手が「驚きました」と言ったとき、あるいは驚き表情をしたとき、それで観察や会話を終えてはいけないのです。驚きの後に来る感情が、その人がある刺激に対して抱いた評価だからです。

 

食事をしている人が、「意外な味~」と感想を述べるとします。意外という言葉は、驚きです。意外に美味しかったのか、不味かったのか、そのあとの評価が肝心というわけです。

 

さて前フリの解説が長くなりました。本問題に当てはめて考えましょう。

 

問1:悲しみ表情+このような結果になるなんて思ってもいませんでした。

「思ってもいない」という言葉は意外性・反予想を意味するため、驚きです。驚きは全て言動一致ですので、〇ということになります。

問2:幸福表情+このような結果になるなんて思ってもいませんでした。

問1と同じ理由で〇です。

問3:恐怖表情+私はこの職に就くために十分な準備をしてきました。

恐怖表情は覚醒―不快です。「十分な準備」という言葉は自信を意味します。自信をエネルギッシュな状態と捉えれば覚醒―快、安心ととらえれば眠気―快です。いずれにせよ言動不一致なので×です。

問4:軽蔑表情+チームの中では私がトップ成績です。

軽蔑表情は優越感の現れですので快です。「トップ」というポジティブな言葉も快ですので、言動一致ということで〇です。

 

言動不一致を論理的に考えることは意外に難しい場合があります。ときに感情を理性的に見つめ、感情をマネジメントするレールを作りましょう。感情を有益に活用することが出来るようになるでしょう。

 

 

清水建二

参考文献

“A Circumplex Model of Aflect” by James A. Russell, Journal of Personality and Social Psychology, 1980, 39, p. 1168.

2017年8月21日(月)キャリタス就活フォーラムDISCOイベント振り返り

 

本日は、月曜日に開催されましたキャリタス就活フォーラムby DISCO様のイベントを振り返らせて頂こうと思います。

 

東京ビックサイトの会場にて、11:00~12:00の回と12:30~13:30の回の2回登壇させて頂きました。今回の面接LABOのテーマは、

 

第1部面接LABO【面接突破】Yes(合格)を引き出す面接術

第2部面接LABO【面接官攻略】面接官の心理を読み取り、自分を売り込む方法

 

でした。

 

それぞれのセミナーでは、前半は好評の鉄板ネタである、

 

・自分の行動と体験の中にある感情と学びを明確にすることでオリジナリティーのある回答を作る方法

・行動・体験から一貫したセールスポイントを伝える方法

 

を説明させて頂き、後半ではテーマに沿ったTipsを説明させて頂きました。それぞれのテーマによって内容は異なりますが、核となる共通のことは「面接官の感情の変化に応じて、情報の濃淡や伝え方を変える」というものです。

 

例えば、自身の意見を述べる場面があるとします。応募者の意見を聞きながら、面接官は「なるほど。素晴らしいアイディアですね。」と返答するとします。その返答を発する直前、あるいは発しながら、面接官の顔に熟考表情が浮かんだら、どんな言葉を次に続けたらよいでしょうか?あるいは、軽蔑表情が浮かんだら、どんな言葉を次に続けたらよいでしょうか?

 

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いかがでしょうか?要は、熟考には説明を、軽蔑には謙虚を、が相手の感情に叶ったアプローチです。面接という場は、自分のアピールの場であることは間違いありません。しかし、アピールという言葉の印象に引きずられて「伝える」スキルばかり意識していては不十分です。リスニングの出来ないスピーカーのままでは、コミュニケーションは成立しません。相手の感情を読まなければ、相手が求める「伝え方」は出来ず、「伝える」は「伝わる」にはならないのです。

 

就職面接だけでなく、一生使えるコミュニケーションスキルをこの機につかんで頂ければという想いで、セミナーさせて頂きました。

 

2018年卒向けの面接LABOセミナーは、次回、2017年9月18日が最終回です。まだ内定をもらっていない方、ギリギリまで就職活動を続けたい方、ビックサイトでお待ちしております。

 

 

清水建二

言葉と表情とが合わないとは?―言動不一致のロジック【問題編】

 

人の話を注意深く聞き正確な情報を収集する上で欠かせない観察視点の一つに、言動不一致、というものがあります。

 

言動不一致とは、言語と非言語とが合っていない場合のことを言います。話している言葉がポジティブなのに表情はネガティブの場合や、その逆、話している言葉がネガティブなのに表情はポジティブといったような場合です。

 

言動不一致が起きた場合、観察のアンテナを鋭くし、言語と非言語の不一致の原因を探ることで相手の本当の気持ちに辿りつくことが出来ます。「言葉に比べ表情や動作はコントロールがきかない」という前提に基づいている手法です。

 

それでは実践!ということで一見簡単そうなのですが、意外と一致か不一致かを判断するのが難しい場合があります。例題を通して考えてみましょう。

 

問題:問1~4の中で言動が一致している(言葉と表情とが一致している)ものには〇を、言動が一致していない(言葉と表情とが一致していない)ものには×をつけて下さい。

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※本画像の権利は、株式会社空気を読むを科学する研究所に帰属します。無断転載を禁じます。

 

瞬間的に〇×を判断できたでしょうか?意外と難しい問題もあったかも知れません。

解答は来週させて頂きたいと思います。

 

 

清水建二

声をかける・かけない接客のタイミング

 

とても興味深いニュースを目にしましたので、まずはこちらをどうぞ。

headlines.yahoo.co.jp

 

記事の内容をまとめますと、買い物中などに声をかけて欲しくないお客さんに声掛けをしない接客のあり方が工夫されているという内容です。

 

確かに「静かに買い物したいな~」とか思うことがありますよね。ニュースで取り上げられている事例は、来店やサービスを利用する最初の時点から、お客さんが声かけを求めていないということをサービス提供者が知れるという状況です。

 

声かけするか否かを臨機応変に対応し、接客の質を保ったり、お客さんの消費満足度を高めることの難しさが伺い知れます。

 

臨機応変な対応は一流の接客スタッフさんの暗黙知の中にあることがほとんどです。そこで以前、弊社はそれを見える化するために某店舗で買い物中のお客さんと接客スタッフさんとのやり取りを観察したことがあります。そこでわかったことは、購買段階に応じて特徴的な表情やしぐさの変化があるということです。

 

状況別のお客さんの表情やしぐさを読みとるスキルが身に着けば、声をかける・かけないタイミング、いつどんな声をかければよいかが明確にわかるのです。細かな内容はここで公開できませんが、一つだけそのTipsを紹介したいと思います。

 

ランダムウォーク+真顔

声かけしない方がよいでしょう。ただ商品を見ているだけのお客さんの可能性が高いです。

 

ランダムウォーク+眉間のしわ寄せ(あるいは額に波状のしわ)

声かけ候補です。何か特定の商品を探しているお客さんの可能性が高いでしょう。

 

接客が上手いスタッフさんはお客さんとのコミュニケーションの間合いを自然につかみ、自然にこんなことしています。

 

声かけにも科学を。

 

 

清水建二

額のしわから恐怖・悲しみ・驚きを区別するー解答編

 

本日は前回の問題の解答編です。

もう一度問題を掲載します。

どれが恐怖、悲しみ、驚きを表している表情でしょうか?

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※本画像の権利は、株式会社空気を読むを科学する研究所に帰属します。無断転載を禁じます。

 

正解は、

A列…全て驚き

B列…全て恐怖

C列…全て悲しみ

です。

 

理論的な解説及び個人差による違いの解説は次の通りです。

 

驚き…眉全体が引き上げられることにより、額全体に水平のしわが生じます。A1・A3の画像を観れば明らかです。A2はややしわが確認しづらいですが、額の外側までしわが生じているのがわかります。しわの生じ方は、驚きの強度や個人差によって変わります。

 

恐怖…眉全体が引き上げられると同時に眉が中央に引き寄せられます。これらの動きによって、額中央部に波状のしわ及び眉間には縦もしくは45度のしわが生じます。B1・B2の画像が明らかです。驚きと違い額の外側のしわが消滅していることがわかります。B3はややわかりづらいですが、よく観察すればわかります(専門的に言えば、AU1+2+4がコード化できるので、恐怖に関連する感情が生じていると言えます)。あるいは集団差ではなく個人差で観る、つまりB3をA3及びC3と比較すると違いが際立つと思います。

 

悲しみ…眉の内側が引き上げられます。悲しみが強い場合、眉が中央に引き寄せられます。これらの動きによって、額に山型のしわ及び眉間には縦もしくは45度のしわが生じます。C列の全ての画像で眉間のしわが確認できます。山型のしわが明らかなのは、C3です。山型のしわがC1にも確認できますが、筋肉の動きが弱く見えづらい状態です。C2に関しては山型のしわは生じておりません。額にもともと刻まれているしわに影響された結果だと考えられますが、よく観察すれば内側前頭筋肉(額にある筋肉の内側部分)が強く収縮しているのがわかり、悲しみが生じていることが推測できます。

 

 

清水建二

額のしわから恐怖・悲しみ・驚き表情を区別するー問題編

 

本日は、問題にチャレンジして頂きたいと思います。

次の各表情は恐怖・悲しみ・驚きの感情を表しています。それぞれ特定して下さい。

なお、行(横)は全て同一人物です。

 

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※本画像の権利は、株式会社空気を読むを科学する研究所に帰属します。無断転載を禁じます。

 

解答・解説は次回させて頂きたいと思います。 

 

 

清水建二