微表情

フラッシュのように一瞬で表れては消え去る微妙な表情、微表情。このブログでは、微表情、表情、顔を始めとした非言語コミュニケーションの研究や実例から「空気を読む」を科学します、「空気」に色をつけていきます。

2017年6月24日(土)キャリタス就活フォーラムDISCOイベント振り返り

 

 本日は、先ほど終えたばかりのキャリタス就活フォーラムby DISCO様でのセミナーを振り返らせて頂こうと思います。

 

 私が登壇させて頂いた面接LABOセミナーは、10:00~11:00と11:30~12:30の二回でした。

 

 面接LABOの核となるテーマは、面接を見える化する、というものです。弊社空気を読むを科学する研究所提供のコンテンツでは、面接官の心理を科学知見から読み解き、面接官の心に刺さる回答をどう組み立てれば良いのか?その場で考えなくてはならない回答にはどう反応したらよいか?面接官の感情に合わせてどのように回答(情報)の出し入れをするべきか?ということを中心にお話しさせて頂いております。

 

 

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面接対策セミナー会場準備中の図

 

 今回のセミナーでは、10時からの回では、毎回好評の面接対策コンテンツをお送りしました。特に、オリジナル回答の作り方、ストーリーで伝える一貫性のある回答方法、面接官の眉の動きから話し方を変える方法は簡単なわりに効果的なので、ぜひみなさんの面接(準備段階・本番)で積極的に取り入れて頂きたいと思います。

 

 11時からの回は、いつもとは趣向が異なるものをお話しさせて頂きました。「本当にこの会社で大丈夫?自分が幸せでいられる会社の見極めポイント」と題しまして、すでに内定をもらっている就活生及び志望先の焦点が決まらない就活生対象に、幸せに働くこと・働くことのリアルを伝えさせて頂きました。

 内定先や志望先の客観的な企業情報は、業界誌などを見れば得ることが出来ます。企業の成長率や昇給率、キャリアアップの予測、転勤の有無、手当などある程度把握できるでしょう。しかし、職場の雰囲気や企業風土、社員さんの熱意などは、その企業の社員さんという人を介してしか得ることは難しいでしょう。なぜそうした人的情報の収集が重要かと言いますと、それはとりもなおさず、(裏)転職理由のトップ3が人間関係の悩みにあるからです。

 本セミナーでは、企業の内部で働く社員さんから企業の人的情報を得る方法についてご紹介させて頂きました。具体的には、会社のリアルを知るためにどんな質問をしたらよいか、ある質問に対する社員さんの反応のどこに気をつけるべきか、職場雰囲気のリアルはどこに現れるか、そんなことをお話しさせて頂きました。

 

 まだ内定を得られていない方もすでに内定を得ている方も、就職活動は自分を見つめるとても良い機会です。自分は何者?自分は何をしたいのか?自分は何が出来るのか?自分はどんな人と働きたいのか?焦る気持ちを押さえて、じっくりと自分と向き合って下さい。自分の価値は相手の中に見出せます。自分の価値を最も認めてくれる、高めてくれる企業はどこか、人は誰か、分野は何か?ここで頑張れなければ、この先も頑張れません。大きく飛躍するには、それだけ長い準備期間が必要なのです。

 

 次回のキャリタス就活フォーラムでのセミナーは7月13日(木)を予定しております。面接が苦手、内定もらったケドまだ就活続けたい、これから就活頑張りたい!様々な想いの就活生にお会いできることを楽しみにしております。

 

 

清水建二

「りんごとりんご」を比べれば瞬きの増加も鼻にさわるもウソのサインになる

 

瞬きの増加と鼻にさわる動きはウソのサインではない、前々回及び前回のブログで取り上げさせて頂きました。

 

鼻にさわる、という動きをより抽象的な視点で説明しますと、自分の身体の一部で他の身体の一部をさわったり、つねったり、さすったりするマニュピュレータ―という現象です。顔をさわる、額をこする、胸元をなでおろす、手をすり合わせる、全てマニュピュレータ―です。

 

瞬きの増加は主に緊張時に、マニュピュレータ―は緊張を含めた感情のブレを原因に起こることが知られています。

 

ウソがばれないだろうかと緊張していれば、これらの動きは生じますし、冤罪をかけられてしまうのではと緊張すれば、同様にこれらの動きは生じます。

 

つまり、瞬きの増加とマニュピュレータ―はウソのサインではないのです。しかし、工夫次第でウソのサインとして使えることがあります。

 

例えば、ウソをついているのでは?と疑われている3つの疑惑について容疑者が供述しているとします。どの疑惑について話しているときも同じくらい緊張しているとします。こうした中で、ある話題、例えば2番目の話題を話しているときに、他の話題を話しているときに比べ、瞬きやマニュピュレータ―増加が観られれば、ウソのサインになり得ます。

 

同じ緊張状態なのになぜ2番目の話題だけ緊張度が高まったのだろうか?

 

と考えるわけです。

 

もちろんこの段階で供述をウソと断定することはなく、2番目の話題について深掘りする段階へとインタビューは続きます。

 

上手く個人内比較を設定できれば、ウソのサインとして認められていない動きもウソのサインとなり得るのです。

 

何でもそうですが、生きる上で大切なことは、

 

特別を探す必要なない。

工夫次第で普通が特別になる。

 

ものだと思っています。

 

 

清水建二

りんごとりんご

 

前回の続きです。

なぜ不倫会見時の映像と普段の会見映像を比べた結論は問題なのか?です。

 

それは同じものを比べていないからです。

 

夫や妻に不倫を疑われ、それを否定している情景を想像してみて下さい。

緊張しませんか?

本当に不倫をしていても、本当は不倫をしていなくても、緊張しませんか?

 

人は緊張すると、瞬きをたくさんします。また、顔や鼻、その他自分の身体に触れる・さわる・さするなどのマニュピュレータ―という動きをします。

 

人前で話すときを想像して下さい。

緊張しませんか?

 

答えが見えてきました。クリントン氏の話に戻しましょう。

そもそも不倫会見している時点で緊張してしまうため、そのサインが緊張のサインなのか、ウソのサインなのかわからないのです。

 

もし正確にウソのサインを特定しようとするならば、同じものを比べなくてはいけません。クリントン氏の例で言えば、理想的には、本当に不倫をしていないことがわかっている他の不倫会見映像と本当に不倫をしたことがわかっている不倫会見映像をとを比べる。まぁ、基本的に不可能でしょう。それならば、せめて、ウソをついているのではないかと疑われているものの本当に真実を述べている会見映像と今回の不倫会見映像とを比べる。

 

つまり、同程度に緊張している状態の二つのものを比較しないと差を比べたことにはならないのです。これをApple to Appleと言います。同じもののようで違うものを比較していることをApple to Orangeと言います。

 

比較対象が違うものを比較しても何の結論も下すことは出来ません。

 

なお、前回の話を今一度繰り返しますが、比較対象を統制して行われた科学実験では、瞬きの増加やマニュピュレータ―はウソのサインとしては認められていません。

 

同じものを比較する。常に意識したい視点です。

 

 

清水建二

りんごとオレンジ

 

「ウソのサインである」とは、正直者とウソつきとを分けることが出来るサインのことです。こうしたサインの特定を求めて100年以上にわたり科学研究が重ねられています。

 

良く知られる有名なウソのサインとして「瞬きが増加する」「鼻にさわる」という動きがあります。結論から言いますと、科学的にはこれらの動きはウソのサインとはいえない、と立証されています。公平を期して正確に言えば、これらのサインをウソのサインだと述べている論文は少ないです。

 

あらゆる研究の検証結果から、大方のウソ研究者の見方としては、「瞬きが増加する」「鼻にさわる」という動きの観察される頻度は、ウソを疑われている正直者にもウソつきにも差が観られないため、これらの動きから両者を区別することはできない、というものです。

 

しかし、これらのサインは何らかのきっかけで私たちの脳裏にウソのサインとして固定化してしまっています。今回はある「事件」を通じてこのサインについて、比較の重要性について考えたいと思います。

 

かつてクリントン元大統領に不倫疑惑がかけられました。この出来事は、当時、大変センセーショナルなスキャンダルになり多くのメディアに取り上げられ、会見映像を開いたクリントン氏の表情やしぐさはウソのサインを検証する科学論文の分析材料にまでなりました。

 

ことの結末としては、クリントン氏は不倫を認めています。

 

当時から現在にかけ、この不倫否定会見のクリントン氏の表情やしぐさが様々な専門家に分析されています。その方法は、不倫を否定するクリントン氏の会見映像を観て、非言語行動、特に瞬きの増加や鼻をさわる回数を数えます。次に普段のなんでもないときのクリントン氏の会見映像を観て、同じく瞬きの増加や鼻をさわる回数を数えます。そしてそれらの回数を比べるという方法です。

 

検証の結果、不倫会見時のクリントン氏の瞬きの量と鼻をさわる回数が、普通の会見時と比べて、はるかに多いことがわかりました。そしてこの検証をもって、瞬きの増加や鼻をさわる回数の増加をウソのサインとしています。

 

はっきりと申し上げますが…

 

これは全くナンセンスな方法です。この検証方法では、そうしたサインをウソのサインとして全くもって認めることなど出来ません。こうした手法を取っているからいつまで経っても非言語科学が「あやしい」ものだというレッテルがつきまとうような気がしています。

 

なぜこの手法では全くもってダメなのでしょうか?

 

答えは…次回のブログで。

 

 

清水建二

参考文献

Hirsch A.R., Wolf C.J. (2001). Practical methods for detecting mendacity: A case study. Journal of the American Academy of Psychiatry and the Law, 29, 438–444.

DVD購入者特典④―模範解答

 

本日は前回の解答です。以下が模範解答になります。分析対象動画はvol5-q13です。

 

 

問題1:00:11秒のときの表情筋の動きを全て記述して下さい。またこの表情はどんな感情を示していますか?

 

 vol5-q13の00:11秒時のとき画像を参照しながら、分析結果を記述する。なお以下の記述はすべて分析対象者の中立表情と比べたものであることを留意されたい。

 

 「眉が引き上げられる」+「上まぶたが引き上げられる」+「下まぶたに力が入れられる」+「口角が水平に引かれる」という動きが観察されることから、対象人物は驚きと恐怖を同時に抱いていると考えられる。ただし、恐怖に関連する表情筋の数と強度により、驚きより恐怖の方を強く抱いていると考えられる※1。

 「眉が引き上げられる」という単独の動きは、驚きあるいは恐怖の意味を持つ。どちらの意味かはこの単独の動きのみからは決めることが出来ない。より抽象的な意味次元で解釈すると情報検索と言える。「上まぶたが引き上げられる」単独の動きは、怒りや驚き、そして恐怖といった複合的な意味を持つが、「下まぶたに力が入れられる」動きが伴っていることから、恐怖と解釈できる。「口角が水平に引かれる」単独の動きは、恐怖を意味する。

 

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※本画像の権利は、株式会社空気を読むを科学する研究所に帰属します。無断転載を禁じます。

 

※1 複合的な意味を持つ表情筋の動きの中で一番強い強度を持つ表情筋の動きを代表して、特定の感情に解釈する方法は科学論文で観られる手法である。

 

問題2:この表情はアメリカ人と比べると日本人の正答率は低い傾向にあります。その考えられる理由とともに日本人にとってこの表情は他のどの表情と混同されてしまうのか答えて下さい。

 

 日本人はアメリカ人と比べて、恐怖表情を驚き表情と取り違える傾向にある。その理由は、日本がアメリカよりも犯罪が少なく安全な国であることから、恐怖を抱く状況が少なく、また他者の恐怖表情をシグナルに行動することから得られる利点も少ないことから、恐怖表情の認識精度が低下したのではないかと考えられる。

 

 

 以上が模範解答となります。問題2の日本人の誤読に関しては定説があるわけではないため、他にも理由は考えられると思います。なお微表情検知DVD動画版では、本動画の正解は恐怖に代表して設定しています。表情認識率の違いについて関心がある方は、専門書ですが、木村あやの『研究用日本人表情刺激の作成とその臨床的適用』風間書房(2013)が参考になります。

 おまけ話ですが、この書籍には私的な思い入れがあります。私が月収10万円で塾講師をしていたとき、なけなしのお金で購入した書籍でした。よく行く書店のよく行く心理学コーナーで本書を見つけたとき、もの凄く興奮したことを覚えています。食費もままならないのに即買いした書籍でした。

 

 

清水建二

参考図書

研究用日本人表情刺激の作成とその臨床的適用

研究用日本人表情刺激の作成とその臨床的適用

 

 

DVD購入者特典④―日本人が混同しやすい表情

 

本日はDVD購入者特典第四弾です。今回取り上げさせて頂く分析画像は、微表情検知トレーニングDVD動画版のVol5からです。vol5-q13の動画をよく観察してみて下さい。

 

問題1:00:11秒のときの表情筋の動きを全て記述して下さい。またこの表情はどんな感情を示していますか?

問題2:この表情はアメリカ人と比べると日本人の正答率は低い傾向にあります。その考えられる理由とともに日本人にとってこの表情は他のどの表情と混同されてしまうのか答えて下さい(私の書籍を読まれた方、あるいはコース受講生の方はわかるハズ!)。

 

参考までに00:11の静止画像を以下に示します。500字以上1000字以内でまとめてみて下さい。

 

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※本画像の権利は、株式会社空気を読むを科学する研究所に帰属します。無断転載を禁じます。

 

動きが速すぎてぼやけていますね。

動画で確認してみて下さい。

 

模範解答は次回のブログで公開します。

 

 

清水建二

感情認識AIのさらなる向上に必要なこと

 

私はいくつかの感情認識AI(本文でいう感情認識AIとは表情を認識するAIに限った話です)を自分の表情を使って体験してみたり、実際に弊社が所有する様々な表情データを読みとらせてみたりして、その向き・不向きやいかにして精度の向上を目指すか、どこから使い手である人間の関与や解釈が必要となるかを日々考えています。

 

現時点で、各メーカーから販売されている感情認識AIが、私の知る限り共通して出来ることは、「表情の変化から感情を推測する。」ということです。表情筋をどれほど細かくとらえることが出来るか、微表情を検知することができるか否か、どの程度顔の角度や照度に影響を受けるかなど各メーカーのアプリによって得意・不得意があります。

 

各メーカーのアプリが共通して出来ないことは、感情の原因を推測することと表情筋の動きを感情と会話のシグナルとに分けることです。感情の原因の推測についてはどこかで書いたと思うので、今回は会話のシグナルについて書きたいと思います。会話のシグナルとは、簡単に言えば、会話中に見られる感情以外の顔の動きのことです。

 

例えば、私たちは相手の会話が理解できないときなど眉をひそめると思います。これはレギュレーターと言って、会話の主導権を交代させる機能を持つ会話のシグナルの一つです。会話中の眉の引き下がりを感情認識AIに読みとらせると、怒り感情に自動的に分類します。また私たちは思案しているとき、唇に力を入れたり、下唇を引き上げたりします。これも現在のAIは、怒りや悲しみ感情と自動的に分類します。

 

つまり、感情認識AIで表情の変化を(各メーカーによりますが、多くはデフォルトのままで)自動検出させると、会話のシグナルも感情に自動変換されるのです。このことの理解はとても大切だと思います。

 

例えば、接客を受けているお客様の表情をAIに読みとらせ、感情と購入との関係を計測しようとするとします。先の理解が浅く、AIの検出結果だけを見ると次のようなわけのわからない結論に至る恐れがあります。

 

「サービス購入時に怒り感情を抱くお客様は、サービスを購入する傾向にある。」

 

この場合の正しい解釈は、

 

「サービス購入時に思案するお客様は、サービスを購入する傾向にある。」

 

でしょう。

 

サービスを買うか・買わないか迷ったそのタイミングで、店員さんから耳寄りな情報を聞く、お客様自身がお得な情報を思い出す、それが後押しとなって購入につながった、そんなところでしょう。

 

AIがその内部で何をやってくれているのかについての正しい理解がなければ、AIを効果的に使いこなすことは出来ません。例えるならば、統計学の基礎知識なしに統計ソフトを使って記述統計や推測統計をしてしまうようなものです。

 

感情認識AIの注目が高まり、その利用可能性に期待されることが大きくなればなるほど、感情の機能や表情の意味について学びを深めることが大切だと思います。

 

 

清水建二