微表情

フラッシュのように一瞬で表れては消え去る微妙な表情、微表情。このブログでは、微表情、表情、顔を始めとした非言語コミュニケーションの研究や実例から「空気を読む」を科学します、「空気」に色をつけていきます。

清水建二の本棚②

 

今回ご紹介したい書籍は、こちらです。 

 年末に私の本棚に仲間入りをしました。

 

私は、著者の長谷川先生の授業を早稲田時代に何講座も受講していたり、先生の書籍をほとんど全て読ませて頂いております。一種のファン?ですかね。科学の世界の面白さ、ワクワク、ゾクゾクする世界を教えてくれたのは、大学入学後は長谷川先生の授業が初めてでした。

 

もう一人の著者、山岸先生の研究も私は大好きです。論文や書籍を読ませて頂く度に、私の常識はいつもひっくり返されます。一種の畏怖の念を向けている先生の一人です。

 

さて、そんな両先生の対談なのですから、面白くないわけがありません。現在日本が抱えている様々な社会問題をどう捉えたらよいのか、どう解決に導けばよいのか、ということに対して核となる議論を交わされています(詳しくは、是非、書籍をお読み下さい)。

 

数十年間、変わらぬその態度に敬意を抱く想いです。

 

しかし、私が会社を経営するようになって以来、科学的議論の在り方に少し疑問を感じ始めていることもここで告白せねばなりません。

 

論理的に考えたら、効率を重視したら、確かにそうだ、と思う一方で、そうは言ってもそうはならない事情があるのだな、ということです。

 

「この状況・環境をこう変えれば、問題は解決される。」と科学的議論は進行します。しかし、実際のビジネスや政治では、「そうするには、多くの人の想い・意図を動かさなくてはいけない。」となります。平たく言えば、頭で実行することと行動に移すことには雲泥の差があることがある、ということなのです。

 

この頭(科学)と行動(ビジネス)との大きな差を埋めること、埋める取り組みを論理的かつ実際に実行されてている人・組織は、日本にはほとんどないのではないかと思うわけです。

 

日本は、科学者とビジネスマンとの距離が遠すぎるように思います。

 

科学者はビジネスをしませんし、ビジネスマンは科学をしません(稀、と言った方が正確でしょうか。また自然科学はこの言説に当てはまらないことが多いと思います)。

 

お互いがお互いのことをもっと知り、お互いの活動の中に身を置けば、現状よりもさらに!さらに!!有意義な社会問題の解決策が生まれると思うのです。

 

「わかっちゃいるけど、やめられない。」という生の声をどう科学的に、論理的に扱えるのだろうかと。

 

「論理的帰結はこうです。」という声をどう膨大な経験則と活動に裏付けられた実績は扱えるのだろうかと。

 

科学者×科学者の対談、私は大好きですよ。もちろん。でも、一流の科学者×一流のビジネスマンの本気の対談を聞きたい、読みたい、単なる意見交換ではなく、本気の行動変革・組織変革につながるような対話が聞きたい、読みたい、私はそう思うわけです。

 

そうした想いの端緒が、空気研の活動であり、私の著作だと信じています。

 

最後に私の専門に寄せたお話しを。非言語コミュニケーション研究者×ビジネスマン(法の執行官なども含む)のコラボ書籍を紹介させて下さい。

Nonverbal Communication: Science and Applications

Nonverbal Communication: Science and Applications

 

 日本でもこんな書籍が生まれて欲しい、いつの日かこうした書籍の執筆者の一人として名を連ねたいと思っています。

 

 

清水建二

 

お知らせ

「表情・しぐさ分析総合コース」4月開講のお申し込みを開始しました。

 

http://peatix.com/event/236594/view

 

ご興味・ご都合のつく方、是非、どうぞお越し下さいませ。6人限定の少人数で蜜な学びをして頂けると思います。

 

性犯罪被害を進んで証言する子どもと証言を躊躇する子どもの表情の違い

 

子どもが性犯罪の被害者になる場合、難しいのがその証言の精度を得ることです。子どもの話は、出来事の意味を正しく把握できていないために被害の描写が曖昧になったり、記憶違いが起きたり、場合によってはファンタジーやウソが含まれることがあります。また、子どもから被害の状況を聞き取る捜査官が、有益な情報を得るために、誘導的な質問をしてしまう問題もあります。

 

そこで子どもの証言の精度を推定するために様々な手法が考案されています。例えば、Statement Validity Assessment (SVA)という面接法では、証言の論理性、突飛な詳細情報、加害者の心の状態の言及、証言の訂正などの指標をスコア化し、証言の精度を客観的に判断しています(SVA面接法及びその信頼性について詳しくは、Vrij, 2005を参照下さい)。

 

SVAのように言語的側面から子どもの証言の精度を推定しようとするアプローチが主流ですが、子どもの言語的側面の弱点を補うために非言語的側面からアプローチしようとする動きもあります。その一つが、証言中の子どもの表情を観察する手法です。

 

Bonanno(2002)らの研究によると、自身の性被害を積極的に話そうとする子どもとなかなか話そうとしない子どもの表情には違いがあると言います。この研究によりわかったことは次の通りです。

 

自身の性被害の開示について、積極的な子どもは嫌悪の表情を表わす傾向にある、消極的な子どもは恥の表情を表わす傾向にある。

自身の性被害を消極的に話す子は、性被害を受けていない子に比べ、社会的な笑い(=いわゆる、礼儀のための作り笑い)が多い傾向にある。

 

本研究の知見から私が注目したい表情は、消極的な子どもの表情、すなわち、恥表情と社会的笑いです。恥表情は、うつむき、場合によっては口に力が入る顔の動きとして表れます。これは一見、ウソをついているように思われる恐れがあります。恥感情の機能は、自己像の維持です。恥を感じている間というのは、自分というものを保とうと必死な状況なのです。また、社会的笑いも、「なぜネガティブな出来事を話しているのに笑っているのだろう?これはウソなのでは?」という誤解を捜査官に与えてしまいかねません。ウソだと思われてしまえば、自己の被害の開示に消極的な子どもの被害実態が隠蔽されたままになる危険性があります。

 

またSVAは子どもから言語的な証言が得られることを前提としているため、消極的な子どもの場合、そもそも証言の精度をはかるためのスコア化すら難しくなる可能性があります。

 

しかし、消極的な子どもにこうした表情が表れる傾向にあることを知っておけば、証言をウソと誤判断する危険性を減らすことができるでき、SVA以外の面談法を考えることも出来ます。

 

言語と非言語アプローチとが相互補完的な面談法のさらなる活用法・発展が望まれます。

 

 

清水建二

参考文献

Bonanno, G. A., Keltner, D., Noll, J. G., Putnam, F. W., Trickett, P., LeJeune, J., & Anderson, C. (2002). When the face reveals what words do not: Facial expressions of emotion, smiling, and the willingness to disclose childhood sexual abuse. Journal of Personality and Social Psychology, 83, 94–110.

Vrij, Aldert (2005) Criteria-based content analysis: a qualitative review of the first 37 studies. Psychology, Public Policy, and Law, 11 (1). pp. 3-41. ISSN 1076-8971 10.1037/1076-8971.11.1.3

怒涛の研修・セミナーラッシュ&『婦人公論』『戦略経営者』掲載のお知らせ

 

今週は研修とセミナーのラッシュでした。某所々にて7時間研修×3回と本日レギュラーの4時間のセミナーととても有意義な時間を参加者の方々と過ごすことが出来ました。

 

私が普段より申し上げている通り、50時間~100時間の学習・実習で日常的に使える感覚が感じられてくるようになるので、それらの学習・実習時間に達するまで研修生の方及びセミナー受講生の方は、学習・実習を続けて頂ければと思います。きっと、これまで意識的には見えていなかった世界が見え、世界の捉え方が変わってくると思います。

 

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毎度おなじみ、休憩時間にスタバのドリップコーヒーでしばし一息。

みなさん、知っていました?ドリップコーヒー2杯目は、同サイズ108円で飲めるのです!私はいつも2杯トールサイズを頂いております。

 

続きまして、メディアのお知らせです。年末に受けさせて頂いた取材の内容を『婦人公論』と『戦略経営者』の2月号に掲載して頂いております。現在発売中です。

 

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婦人公論』の方は、感情の受け止め方について解説させて頂きました。微表情に気付いたその後の行動は?ある感情に対してどんな受け止め方が適当か、ご紹介させて頂いております。私の解説記事も読んで頂きたいのですが、特に、今回の取材記事を書いて下さったライターさんの体験談がなかなか感慨深いお話だと思いました。感情の取り扱い方って、わかっているようでも難しいものだな~としみじみ実感させて頂きました。

 

『戦略経営者』の方は、拙著『「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く』の内容を中心に取材して頂きました。微表情・微動作から他者のホンネを察する方法とホンネを聞き出すための最新質問法について解説させて頂きました。本誌では、本書がこれまでの類書とは一線をかしていること、科学的知見に基づき、かつ、様々な対人コミュニケーションに実用的であることを魅力たっぷりに伝えて頂いております。

 

ぜひぜひ、両雑誌とも購入後!ゆっくり読んで頂ければ幸いです。

 

 

清水建二

 

 

 

 

感情のお持ち帰り?

 

「握手会が終わっても自宅に帰った後、いつの間にか笑顔になっているんです。」

 

とあるアイドルの子が言っていたのを聞き、実に興味深い現象だと思いました。そのアイドルの握手会では、メンバーの子たちは一日中たくさんのファンと握手します。メンバーの子たちの表情はもちろん笑顔です(塩対応という笑顔ではない「ファンサービス」もあるようですが…)。一日中、笑顔です。

 

握手会が終わっても無意識に笑顔になってしまうという現象。つまり、もう笑顔というサービスが必要ではない状況でも笑顔になってしまうという現象なのです。

 

過去の時点(=握手会)で形成された笑顔という表示規則(多分、ですけど)が、現在(=自宅)でも残り続ける。過去の時点では意味のある表情のルールでも、現在では特にそのルールに則る必要はないのです。

 

これを物理的に推論すれば、笑顔を形作る大頬骨筋と眼輪筋とが一日中動き続けることで、表情筋の運動がいわば残像のようなものとして自宅に帰って来ても動き続けている、ということなのかも知れません。

 

自分で言っていてもこうした現象があり得る可能性にちょっと驚きを隠せないのですが、私がより気になるのは、心理的な側面です。

 

感情はムリをし続けるとバーンアウトと言って、心が疲弊し燃え尽きてしまいます。そこから心の病を患ってしまう方もいるのです。

 

ただ、感情に無理をする仕事をしている方がバーンアウトになってしまう例は聞いたことがあるのですが、冒頭の表情筋の、いわば持ち帰り現象の例は初めて耳にしたので、心理的にどんな影響があるのだろうか?と疑問に思ったのです。

 

アイドルの子たちの仕事中(=握手会中)の本当の感情は、私にはわかりません。ファンとの交流を本当に楽しいと思うこともあるでしょうし、そうではないときもあるかも知れません。

 

感情労働(=接客や営業など)に従事している方々の心理的な影響を調査した研究によると、仕事中に嫌な想いをして感情を抑制して受ける心理的影響よりも、仕事が終わってもその嫌な想いを持ち続けている方が心理的に悪影響があるということがわかっています。

 

つまり、嫌な感情を仕事を終えた後に持ち帰ってしまっていることに問題があるのです。

 

それで冒頭の例に戻るのですが、表情筋が勝手に笑顔になるのは、表情筋の持ち帰りだけれども、これも感情の持ち帰りと言えるのだろうか?楽しくなくても笑顔を作ると本当に楽しく感じられるというフィードバック仮説もある、しかし、それをやり過ぎるとバーンアウトになる例もあるし。やはり、表情筋の残像程度では心に影響を与えるレベルにはいかないのだろうか…等々と疑問が頭をグルグルと回り続けているのです。

 

結論出ません。

調査継続です。

 

 

清水建二

参考文献

あなたの仕事、感情労働ですよね?

あなたの仕事、感情労働ですよね?

 

 感情労働について理論と現場の声を紹介している科学と経験のハイブリッド本。感情労働について理解を深めたい方には、感情労働関連の書籍の中では最もオススメの本です。

 

自然な表情と意図的な表情との間には違いがあるのか(表情分析エキスパートコース補論編)?

 

本日は、表情分析エキスパートコースの受講生のみなさん(もしくはFACSを独学で学ぶマニアックな方々)への補論です。

 

テーマは、真の感情から表出された表情と演技された感情から表出された表情との間には違いがあるのか、です。

 

これまでもこのテーマでは様々な研究を紹介してきましたが、これも面白い研究なのでご紹介いたします。

 

研究方法は以下の通りです。

 

研究方法:

真の感情から表出された表情のAUと演技された感情から表出された表情のAUを比較する。

②真の感情から表出された表情のAUは、EkmanとFriesen(1978,1982)の分類法に依拠する。

③演技された感情から表出された表情のAUは、実験のために用意されたシナリオに沿って役者に演じてもらったものを使用する。

③演技された感情から表出された表情は、二つの条件に分けられる。

  1. a) EFE条件

EFE(encoding felt emotions)条件とは、スタニスラフスキー・テクニック(場面にあった感情を自己が体験した同種の経験から呼び起こし、演じている役に投影する演技手法)を使用した条件である。

  1. b) EUE条件

EUE(encoding unfelt emotions)条件とは、役者が感情を何も感じていない状態で、意図した感情を表情筋を駆使して表現する条件である。

 

EFEは、いわば、感情を込めた演技です。

EUEは、いわば、感情を込めない表層的な演技です。

 

以上の方法を用いて実験したところ次の結果となりました。結果を表にまとめました。

 

 

真の感情条件

EFE条件(感情を込めた演技)

EUE条件(感情を込めない演技)

幸福

6+12

6+12+25+26

6+12+25+26

恐怖

1+2+4+5+20+25+26+27

4+5+7+26

4+5+26

怒り

4+5+7+10+17+22+23+24+25+26

4+5+16+20+23+25+26

4+5+17+20+23

驚き

1+2+5+26+27

1+2+5+25+27

1+2+5+20+26

悲しみ

1+4+6+11+15+17+25+26

1+4+7+15+17+25+26

15+17+23+26

嫌悪

9+10+16+25+26

4+7+10+25+26

4+6+10+20+25+26

出典:Ekman and Friesen, 1978, 1982, Gosselin, Kirouac, and Dore, 1995を参考に清水作成。

 

実験結果の表を見ると、他の様々な研究も示している通り、恐怖の信頼できる筋肉(AU1+2+4)と悲しみの信頼できる筋肉(AU1)は演技では難しいということや演技だと余分な表情筋の混入がある(演技条件下での驚きのAU20や嫌悪のAU4など)ということがわかります。つまり、演技だと表情筋の過不足がある、と言えましょう。

 

本研究についてより詳しく知りたい方は参考文献を参照して下さい。

 

 

清水建二

参考文献

Ekman,P. (1982). Emotion in the human face. New York: Pergamon Press.

Ekman, P., Friesen, W.V. (1978). Facial Action Coding System: Part Two. Palo Alto. CA: Consulting Psychologysts Press.

Gosselin, Pierre; Kirouac, Gilles; Doré, Francois Y. (1995) Components and recognition of facial expression in the communication of emotion by actors.

Journal of Personality and Social Psychology, Vol 68(1), Jan 1995, 83-96.

 

 

写真面割りの科学

 

「写真面割り」という言葉を聞いたことがありますか?

 

警察署にて、事件の目撃者がマジックミラー越しに立ち、ズラッと並べられた犯罪容疑者の中から誰が本当の容疑者かを判断している…そんなシーンを映画などで見たことがあるかも知れません。

 

写真面割りとは、これの写真版です。目撃者に容疑者の顔写真を見せて、どれが容疑者ですか?と尋ねる方法です。この写真面割りにはいくつかの方法が取られています。

 

次のどの方法が目撃者にとって最も誤判定が起きにくい容疑者判定法だと思いますか(状況を単純化するために、状況証拠からある程度確からしい容疑者を警察が把握している場合とします)?

 

①容疑者及び確実に容疑者ではない複数人を含む顔写真を同時に見せ、「この中に容疑者がいます。誰ですか?」と問う方式

②容疑者及び確実に容疑者ではない複数人を含む顔写真を同時に見せ、「この中に容疑者がいるかもしれませんし、いないかも知れません。この中に該当者はいますか?」と問う方式

③容疑者及び確実に容疑者ではない複数人を含む顔写真を一枚一枚順番に見せ、「この中に容疑者がいます。誰ですか?」と問う方式

④容疑者及び確実に容疑者ではない複数人を含む顔写真を一枚一枚順番に見せ、「この中に容疑者がいるかもしれませんし、いないかも知れません。この中に該当者はいますか?」と問う方式

 

どれでしょうか?

 

①②と③④の違いの一つは、相対判断になるか絶対判断になるかです。もう一つ違う点は、容疑者がいると捜査官が断言しているか、していないかです。相対判断だと、自分が目撃した人物に一番近い人物を、複数人を相対的に比べて判断することになります。つまり、目撃者は同時に複数人見ながら「どの人が一番、自分の記憶にマッチするかな?似ているかな?」と考えるわけです。絶対判断だと、一枚一枚顔写真を見ながら、その都度、自分が目撃した人物かどうかを判断することになります。目撃者は、顔写真を一枚見ては、「自分の記憶に合う・合わない」を考えるのです。

 

捜査官の「この中に容疑者が必ずいます」という発言があると、相対判断に拍車がかかり、目撃者は「この中に必ず容疑者がいるのだから、自分の記憶に最も近い人物を選べるハズ」となります。しかし、「容疑者がいるかいないかわからない」という発言かつ絶対判断の条件だと、目撃者は、顔写真を一枚見ては「この人物はどうかな?」また顔写真を見ては「この人物だろうか?」と慎重に判断していくことになります。

 

以上のことより、正解は④となります。

 

なお写真面割りをするときには、最初に目撃者に容疑者の風貌に関する描写をしてもらい、その描写に合うような容疑者役の複数人の顔写真を作成します。そしてそれらを容疑者の顔写真の中に混ぜ、目撃者に顔写真が最初から何枚あるかを知らせず、一枚ずつ提示し、容疑者だと判断した瞬間に判定を終わらせる方法が、最も誤判定が起きない方法であることが確かめられています。

 

写真面割りの科学について詳しく知りたい方は、渡辺昭一(編)『捜査心理学』北大路書房のp.20~p.29を参照してみて下さい。

 

 

清水建二

参考文献

捜査心理学

捜査心理学

 

 

感情コントロールの種類―解説編①

 

本日は、1月7日(水)のブログ「感情コントロールの種類―問題編①」の解説をさせて頂きたいと思います。

 

感情コントロールの種類は、強化・弱化・中立化・修飾化・隠蔽化・偽装化の6種類です。それぞれの一般的な解説は『「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く』に書かせて頂きましたので、本書のp.24~を参照下さい。それでは問題を解いてみましょう。

 

1.異業種交流会での自己紹介の場で、目の前にいる相手が「○○検定1級取得しています。」と言っている。あなたはその検定のことを何も知らないために、特に何も感じていないが、愛想で「すごいですね。」と驚きの表情とともに答えた。これは、(         )である。

 

a. 修飾化      b. 弱化     c. 偽装化     d. 強化

 

➡何の感情もないのに驚き感情があるかのように表情を装っているため、これはcの偽装化となります。

 

2.あなたは、友人に誘われコメディー映画をともに鑑賞している。あはたは、全然面白いとは感じず、時間とお金を無駄にしたことにより、「怒り」を感じているが、友人の手前「幸福」表情を繕い、から笑いをして映画を鑑賞している。これは、(         )である。

 

a. 隠蔽化     b. 修飾化     c. 中立化     d. 強化

 

➡本当は怒りを感じているのにそれを笑顔で隠しています。これはaの隠蔽化です。

 

3.あなたは、友人に誘われコメディー映画をともに鑑賞している。あなたは映画内で起こるコミカルなようなアクションに何の心も動かされない。何も感じていない。しかし友人の手前「幸福」表情を繕い、から笑いをして映画を鑑賞している。これは、(         )である。

 

a. 隠蔽化     b. 修飾化     c. 偽装化     d. 強化

 

➡問題1と同じロジックです。答えは、cの偽装化です。

 

4.信頼していた人間に裏切られて「悲しみ」表情を浮かべて泣いている友人がいる。その友人を励ますと友人は「悲しみ」表情の後に「幸福」表情を見せ、「ありがとう。」と一言述べた。これは、(         )である可能性が高い。

 

a. 中立化     b. 修飾化     c. 偽装化     d. 弱化

 

➡悲しみ表情に笑顔を乗せて、いわば「あなたの励ましに感謝しています」という注釈を与えています。こういう現象をbの修飾化と呼びます。

 

5.テレビ番組に出演しているタレントが「驚き」映像を観て、「驚き」表情を2秒以上顔に表している。これは、(         )である可能性が高い。

 

a. 隠蔽化     b. 修飾化     c. 偽装化     d. 強化

 

➡本当の驚き感情は、1秒ほどしか続きません。2秒続くということは驚きをコントロールしている可能性が高いと考えられます。真の感情をより増幅させて見せる行為を、dの強化と呼びます。

 

 

自分がどんな感情をどのようにコントロールしているか客観的に知ることで、自分の心の状態を知ることが出来ます。「あ~なんか人間関係疲れたなぁ~」と思うようになったら、対人関係でどんな感情コントロールを日々しているかセルフチェックしてみて下さい。そして、なるべく感情をコントロールしなくてすむようなコミュニケーションの方法を工夫する、付き合い方の濃淡を変えてみる、感情をムリさせる境と開放する境を明確にする…等々、考えてみて下さい。心がずっと軽くなると思います。

 

 

清水建二

参考文献 

感情コントロールについては本書p.24~を参照して下さい。

「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く

「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く